2008 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ同時代文学の受けた社会的・歴史的刻印-21世紀文学への展望-
Project/Area Number |
17520187
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
初見 基 Nihon University, 文理学部, 教授 (90198771)
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Keywords | 集合的記憶 / ドイツ戦後文学 / 想起の規範的力 / イルゼ・アイヒンガー / ヴァルター・ベンヤミン / 警告碑 |
Research Abstract |
1990年の東西再統一以降のドイツ文学・文化を,〈戦後〉という参照枠から考察し位置づけようという試みである本研究は,理論的考察と具体的な考察,そしてその前提としての資料収集という,3点が柱となる。 1.理論的考察:従来の研究成果を踏まえて,過去の悪しき出来事をいかに〈想起〉,〈記憶〉するか,という側面から〈戦後文学〉を考察する視点を得て,その原理的な基盤を築くために,とりわけヴァルター・ベンヤミンの遺した歴史記述及び物語をめぐる議論を継承するかたちで作業を進めた。そして歴史実証主義と構築主義の対立をいかに接合させることが可能であるかを考察するなかで,〈想起〉における〈使役〉的な面を指摘した。また,戦後の言語空間への視座の設定するうえで,〈集合的記憶における規範性〉という論点を提出した。 2.具体的考察:戦後文学のなかに存していた規範性という観点から,ハインリヒ・ベル及びイルゼ・アイヒンガーに焦点を当てた。前者においては規範性が確立しえていない1950-60年代の営為を概括的に捉え返した。また後者においては,この規範性の力と拮抗するべき個人の記憶が,その文学の核となっている点を明確にさせる作業を進めた。 3.資料収集:これまでの,文学作品及びそれに対する批評,また文学者の時事的発言,といった範囲にとどまらず,ドイツの政治文化形成に係わる言説をより広く収集する努力をした。とりわけ,種々の〈記念碑/警告碑〉をめぐる議論,論争を系統的に集めた。
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Research Products
(4 results)