2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520191
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
谷口 廣治 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (50021770)
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Keywords | ドイツ文学 / 三月革命前期(フォアメルツ) / ゲオルク・ビューヒナー / 精神病跡学 / ヴォイツェク / レンツ / 犯罪責任能力 / メシア主義 |
Research Abstract |
本年度すでに公刊された研究成果は、いずれも日本ビューヒナー協会機関誌「子午線」6号(車成18年度9月出版)に発表された論文一篇、ならびに翻訳一篇に加え、平成19年3月に公刊された国際ビューヒナー・シンポジウムの研究報告書の三点である。後者は本年度のもっとも重要な研究成果として報告することができる。それぞれの内容と研究上の意義について、概要を記しておきたい。 1.「実証の藪を透かし見るその2-マールブルク版『ヴォイツェク』をどう読むか」(「子午線」第6号)-ドイツのビューヒナー研究所が昨年度出版したゲオルク・ビューヒナー全集第十二巻『ヴォイツェク』は、過去二十年にわたる実証研究の成果をふまえて新たなテクスト解読を提起した、ビューヒナー研究史上重要な意味を有する全集版である。拙論はこの全集版の新たなテクスト解読部分を網羅し、テクスト・クリティーク史におけるそれらの意義と問題性を詳細に論じた。 2.アレクセイ・トルストイの戯曲『ダントンの死-悲劇12場』の翻訳(「子午線」第六号)-ビューヒナーの戯曲『ダントンの死』の改作にあたるトルストイのこの作品は、1929年に杉本良吉による翻訳がマルクス書房から出版されているが、文体が古いばかりか誤植も多く、しかもこれを収めている大学図書館が僅少なため、今日では読者の目に触れることがほとんどなくなっていた。そうした事情を踏まえ、非力を顧みずロシア語の原典に基づいて翻訳を試みた次第である。 3.「日本文学と日本のゲルマニスティクにおけるゲオルク・ビューヒナーの影響」(国際ビューヒナー・シンポジウムの報告書<ドイツ語>エーリヒ・シュミット書房)-2004年度ナッシュビル(アメリカ合衆国)の国際ビューヒナー・シンポジウムで発表した報告「日本におけるビューヒナー文学の受容」に加筆、修正を行った原稿である。日本を代表する歌人である岡井隆の『ヴォイツェク海と陸』における日本的美学の特殊性を論じた部分は、国際シンポジウムでも好評を得ることができた。
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Research Products
(3 results)