2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永富 友海 上智大学, 文学部, 助教授 (60305399)
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Keywords | 相続 / 結婚 / 私生児 / 父と叔父 / セクシュアリティ / 騙り |
Research Abstract |
当研究は、この前段階の研究である「ヴィクトリア朝における家族パラダイムの変換の核としての従兄弟・従姉妹表象」と継続して博士論文の一環を成す。論文についてはすでに秋に口述試験も終え、手直しのみの段階に入っている。今年度おこなった研究過程は具体的には以下のとおりである。 1.相続に関する一次史料を、東京大学が所蔵するNineteenth Century, Contemporary Review Westminster Review(マイクロフィルム)から収集した。 2.その他の史料及び現在では入手不可能な書籍類については、平成17年9月9日〜14日にかけてロンドンのブリティッシュ・ライブラリにおいて調査した。 3.平成17年11月7日に、サセックス大学において論文の口述試験を受け、その際、センセーション・ノヴェルを中心とする19世紀イギリス小説の研究家であるProf.Jenny Taylorに、論文全体の構成及び各章の議論についてのアドヴァイスをもらった。 4.Prof.Taylorのアドヴァイスを得て、これまで論じていなかったウィルキー・コリンズのNo Nameという作品の分析を新たにおこなった。No Nameのプロットはまさに当研究の主要テーマである、相続と親子関係によって構成されている。なかでも、円滑な相続の障害となる要因としてコリンズがしばしば物語の題材とする、結婚の不備とそれに伴う私生児の問題、さらに父亡き後、ヒロインの後見人として登場する父の兄弟と、血縁ではないが、ヒロインにとっての擬似父親の役割を果たす人物に注目しながら、実際の法律の知識や法律用語に忠実な側面を持つコリンズ作品が、家父長制度が相続人として望ましくないとする女性を、わざわざ相続というコンテクストの中で前景化することによって何が生じているのかに焦点を当て、歴史的なfactsへの注視と、物語化への欲望の間に垣間見えてくるコリンズ独特のsexualityへの関心をあぶりだそうとした。
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