2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520197
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永富 友海 上智大学, 文学部, 准教授 (60305399)
|
Keywords | ハードウィック結婚法 / 嫡出 / 庶出 / 類似 / 血縁 / 相続 / 近親 |
Research Abstract |
今年度は、結婚と相続の観点から19世紀小説の構造を考えるという数年来の研究のまとめの段階にはいると同時に、このテーマの更なる発展と分析上の補強のために、18世紀の結婚法に遡って結婚法改正に関連した文化的、歴史的背景を探ることに重点を置いた。またSussex大学のProf. Lindsa Smith, Prof. Jenny Taylorの助言により、Jane AustenからAnthony Trollpeまでを一区切りとし、Thomas Hardyについては、20世紀に向かう結婚と相続についてのパースペクティヴから新しい研究の対象として取り組むという方針を定めた。今年度の具体的な研究過程は以下のとおりである。 1.18世紀のハードウィック結婚法に関する一次史料を、平成19年1月1日〜平成19年1月6日と、平成19年3月21日〜29日にかけて、ロンドンめブリティッシュ・ライブラリで収集した。 2.渡英時に、論文の構成について、Sussex大学のProf. Lindsav Smith, Prof. Jenny Taylorと意見交換をおこなった。 3.Thomas Hardyの短編集を、長編との比較からその特性をあぶりだすと同時に、結婚を主要なプロットのひとつとする19世紀小説が、他者(非血縁)である妻を近親としてとりこむために用いていた類似のレトリックが、Hardyの短編においては機能しなくなっていることを具体的に分析することによって、結婚と相続という19世紀小説の某本構造に依拠しながら、どのようにHardyがそこから脱していったかを明らかにしヴィクトリア朝からモダニズムへの移行期にあったHardyの特性を、物語の内的構造から浮き彫りにしようと試みた。この成果は今秋出版の論文集に収録される予定である。
|