2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代英文学が志向する「平和構築」の可能性-歴史観・政治意識・倫理の表象研究
Project/Area Number |
17520199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
早川 敦子 津田塾大学, 学芸学部, 助教授 (60225604)
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Keywords | 現代イギリス小説 / ポスト・ホロコースト文学 / 第二世代の自伝 / 倫理 / 歴史意識 / 第二次世界大戦 / 神話の解体 / 記憶 |
Research Abstract |
1.今年度研究実績の内容 昨年度までの基盤研究(C)「20世紀英文学にみる『歴史意識』の転換および歴史観の表象研究」で得られた知見をさらに現代英文学に繋げる目的で、おもにホロコーストの第二世代の作家に関して作品分析および現代における「平和構築」の可能性を文学における流れの中で捉える研究を展開した。 具体的な作家としてEva Hoffmanの作品と同世代の、やはり親がホロコーストの犠牲となった第二世代の女性作家であるLisa AppignanesiおよびAnne Karpfを取り上げ、三人の作品の比較研究を行った。その成果は津田塾大学『紀要』に発表したが、その過程でオックスフォード大学名誉教授のDr.Lyndall Gordonより資料の提供をうけるなどの協力を得て、英国における「女性の自伝」研究の視点からのアプローチも行うことにより、Anne Frnakの日記の英訳が戦後文学にもたらした意味についての新たな知見を得た。 現代作家の中にはこの『アンネの日記』をサブテクストとして作品の中に取り込んでいる作家がいるのもその重要性を示唆するものであるが、その中の一人でもある国際アンデルセン賞受賞作家でもあるAidan Chambersの作品分析を行うことにより、歴史を題材にした文学に、どのようなかたちで『アンネの日記』のような作品が機能しうるのか、東京女子大学主催の「特色ある教育支援プログラムWomen and Writing」の一環としてのシンポジウム(2005年10月20日)にて発表をおこない、パネリストとしてイギリスより招聘されていたAnne Thwaiteとの意見交換を行った。 2.今年度の研究成果 以上のような展開を通して、まず「倫理」の問題が文学においてクローズアップされている現代文学の背景と特徴がかなり明確に跡付けられた。ことに、21世紀の新たな危機の状況にあって、作家たちに共通している「過去」の検証と、文学に記すことによる「記憶」の意味が重要な課題であることがわかる。この「記憶」の視点から、さらに次年度は「歴史観」の問題に射程を広げる予定である。
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Research Products
(1 results)