2008 Fiscal Year Annual Research Report
第二次ボーア戦争前後の南アフリカ英語文学における「国家」「国民」そして「読者」
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17520202
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
溝口 昭子 Tokyo Woman's Christian University, 文理学部, 講師 (00296203)
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Keywords | アフリカ / ボーア戦争 / 女性 / 英語文学 |
Research Abstract |
前年に引き続き、ボーア戦争における言説およびそれに関する批評方法について、収集した資料を読み込んだ。日本英文学会や黒人研究の会に参加し、研究者と情報交換を行った。2007年に行った口頭発表「ボーア戦争を巡る表象:Olive SchreinerとSol Plaatjeを中心に」について、Plaatjeに関する考察をさらに発展させ論文“Imagining the Empire under Siege:Sol Plaatje's Writing on the Timeduring the Anglo-Boer War"を『英米文学評論』(2009年3月)に掲載した。大英帝国の同化政策Cape Liberalismを理想とするアフリカ人知識人Plaatjeがボーア戦争中に大英帝国への帰属意識をさらに強めた過程を、彼が戦時中および戦後に書いた日記、エッセイや手紙を用いて考察した。その際にBenedict AndersonのImagined Communitiesをその理論的枠組みとして用い、活字資本と読者の存在が大英帝国に対して植民地人に帰属意識を植えつける過程について特に注目して論じた。さらに、Plaatjeが戦争中つけていた日記Mafeking Diaryが「読者を想定していた」ことに注目し、論文“Writing a Diary under Siege:Imagining the Empire in Sol Plaatje's Mafeking Diary"を『津田塾大学言語文化研究所報』(第23号、2009年)掲載のために執筆し、2009年7月に刊行が予定されている。この論文では、戦争中にMafekingで人々がつけていた日記が「歴史の記録」として意識的に書かれていたこと、また、Plaatjeの日記に記された情報が彼の書く報告書や特派員の新聞記事にも使用されていたという特殊状況の中で、本来私的な日記執筆がどのように大英帝国臣民としてのidentity形成と関わったかについてBenedict Andersonを用いながら論じた。
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Research Products
(2 results)