2006 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける古典生成とゲーテ-規範化のメカニズムと危機の時代における古典の機能
Project/Area Number |
17520206
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
井戸田 総一郎 明治大学, 文学部, 教授 (40095576)
|
Keywords | ゲーテ / ニーチェ / ジンプリチスムス / ユーゲント / 古典生成 / カノン / レトリック / 文体 |
Research Abstract |
ゲーテは『古代とモデルネ』のなかで、古典ギリシャ的なものをカノンとして位置付け、歴史的・資料的考察の領域を越える文化規範であると明確に規定している。カノンとしての古典ギリシャはニーチェによって積極的に継承されている。ニーチェは、音楽のカノンのイメージから、音程や音調が変わり原型から相当程度離れて行くにしても、常に基底となる規範の存在を説明している。カノンは拘束的な機能を持つのであるが、この拘束は創造に不可欠であるとニーチェは主張している。ニーチェによれば、カノンのこの創造性に最初に気づいたのはゲーテである。この点でニーチェがゲーテを高く評価している。しかし、古典文献学者であったニーチェはさらに進んで、文体そのもののなかに古代的なものを再生しようとする。この地平から、ニーチェはゲーテの限界を批判的に検討していくことになる。以上のような問題領域を踏まえて、特に以下の点について研究を進めた- 1)ゲーテとニーチェにおける文化の保守性-カノンと創造 2)インマーマンにおけるゲーテ批判-古典ギリシャをカノン化することに対する異議 3)ニーチェにおける古代レトリック研究 4)ニーチェの文体意識 このような研究に基づいて、同時代におけるゲーテ研究(大学等の制度化されたゲーテ研究)に対するニーチェの批判的言説を分析し、それがディルタイ、ベンヤミンのゲーテ記述に影響している点を明らかにした。 また、イェーナ大学文学部において、雑誌『ジンプリチスムス』と『ユーゲント』において表象されているゲーテに関する講演も行った。テーマは"Wort, Bild und Design als mediale Erinnerungsvektoren-Visuelle Darstellungsmuster in, Jugend "und, Simplicissimus"-"であった。
|