2005 Fiscal Year Annual Research Report
米国ロマン主義文学の超越性と近代日本文学の宗教性をジェンダーの観点から比較する
Project/Area Number |
17520207
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
千石 英世 立教大学, 文学部, 教授 (70094274)
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Keywords | 文学 / 性愛 / 超越 / 宗教 / キリスト教 |
Research Abstract |
米国ロマン主義文学の超越性研究に関しては、作家ハーマン・メルヴィルの足跡を追って、科研費補助金のうち旅費を用いて、米国ニューヨーク州を訪れ、多くの資料を収集した。とりわけ、かれにちなむ土地、建物の写真を撮影できたこと、またピッツフィールド市のメルヴイル記念館にて、写真アーカイヴを閲覧できたことは、収穫であった。また、ニューヨーク市歴史博物館にて、古地図、古写真を収録する書物を入手しえたのも成果であった。これらは、現在、出版計画進行中の「もっと知りたい名作の世界『白鯨』」編の、図版として使用することを考えている。 近代日本文学の宗教性研究に関しては、「漱石か秋声か、小島信夫と文学の未来」なる論文を、「解釈と鑑賞」誌に発表し、死と老いと文学創作の問題を考え、近代日本文学の2大潮流として、漱石的なるものと秋声的なるものを抽出し、前者にキリスト教的超越を、後者に仏教的超越をみる構図を仮説的に考察した。仏教的超越に小説の構築は可能か、秋声の問題はそこにある、と仮説するにいたっている。 また、雑誌「水声通信」2号に「一瞬前の過去」と題した、小島信夫論を掲載し、米軍占領下の戦後日本における、階級問題のなし崩し的清算を見、現在の「無階級社会」日本の問題を考える第一歩とした。 これらは、現在、出版計画進行中の「小島信夫-ファルスの複層」増補版に結果する予定である。
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Research Products
(2 results)