2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ニューイングランド文学へのヨーロッパ文化の波及と効果
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17520212
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 関西大学, 文学部, 教授 (80151695)
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Keywords | ホーソーン / ペンタゴン / ネオ・プラトニズム / 理想都市 / 二つのルネッサンス / 図像 / 高貴な針仕事 / 宮廷仮面劇傷 |
Research Abstract |
9.11以後の世界情勢から、かつての神聖ローマ帝国や現在のEUを含むヨーロッパが、アメリカに与える物心両面の影響力を鑑みるとき、19世紀半ばのニューイングランドのホーソーンの作家的想像力はますます重要性を増す。当該研究では、ホーソーンのロマンスをヨーロッパのルネッサンス精神史の中で読み、今日的な問題を提起する研究を発展させた。視覚イメージを通してアメリカとヨーロッパを繋ぐ視点をホーソーン文学に定着させ、文学と文化研究の接点を模索した。 今年度は(1)『アメリカの理想都市』(6月末)を上梓した。ホーソーンの『ピーター・パーレー世界誌』の初版扉絵の分析から出発し、アメリカ国防総省ペンタゴンの五角形の意味をヨーロッパの五角形の要塞に辿り、ネオ・プラトニズムの伝統を背景に解明しようとした。20世紀アメリカにみられるヨーロッパ・ルネッサンス文化の波及効果が導き出された。(2)科研基盤研究(B)2を新たな構想のもとに発展させた『図像のちからと言葉のちから』(3月)を上梓した。アメリカとイギリスの二つのルネッサンスをヨーロッパ・ルネッサンスの図像学的観点から論じた、類書を見ない学際的研究は、科研研究成果公開促進費を得た。拙論は「高貴なる針仕事-ヘスター・プリンの系譜」である。『緋文字』に登場するヘスターの刺繍や仕立てに関するテクストの記述から、それがヨーロッパ・ルネッサンスの高貴な女性の伝統的技であること、それが意味することを宮廷仮面劇との関係で論じた。また、2006年度アメリカ文学会関西支部大会(12月)にて、19世紀アメリカ作家達が独立期をいかに語り直したかを語るフォーラム『起源の感覚とアメリカ文学』を組織し、司会・講師を務めた。私の報告は独立戦争をヨーロッパ・ルネッサンスに遡る視点で捉えたホーソーンについてであった。
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