2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520243
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
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Keywords | 浙江省 / 民間演劇 / 再興 / 宝巻 / 灘簧系 / 太保書 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度の慈渓・紹興・余姚における調査報告を「浙江における灘簧系演劇の再興」(『富山大学人文学部紀要』45)として発表した。この論文は、紹興を中心として再興している灘簧系演劇(芸能)の実態、再興の理由およびその今日的意味について考察したものである。また、民間演劇のテキストを収集した中から「割麦龍図宝巻」「売花龍図宝巻」「売水龍図宝巻」を取り上げ、その電子化を行った。これは次年度にネット上で公開すると共に、テキストに解説を加えて冊子として報告する予定である。 また、浙江省嘉興・海寧・海塩・平湖を中心とした民間演劇と民間芸能の調査にも当たった。中でも、「平湖太保書」と言われる説書活動が中華人民共和国成立以前と同じ形式で行われていることを調査し得た。「太保」とはいわゆる「巫師」であるが、この地域では民間の説書芸人が「巫師」を兼務し、歴史の記載さながらに演じていた。この「平湖太保書」の上演実態と宗教的意味および上演の背景については、次年度に論文として上梓する予定である。 ここ2年の調査によって、同じ浙江省の中でも、省北部は説書系の民間芸能が今日の民間の宗教儀式と関わりながら再興しているのに対し、紹興一帯は宗教行事の中での再興とはいえ、灘簧系演劇(芸能)が娯楽性を色濃くもちながら上演されていることが窺えた。この相違は、それぞれの地域がもつ伝統演劇(芸能)の歴史的背景と経済的な背景によって生まれたものといえよう。
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Research Products
(4 results)