2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本語受動構文の構造的意味と推意に関する語用論的原理の記述的研究
Project/Area Number |
17520254
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 重広 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (40283048)
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Keywords | 構文推意 / 用言複合体 / 通言語学的特性 / 斉一的受動構造 / 語用論的再解釈 / 迷惑受身 / 機能境界 / 形態境界 |
Research Abstract |
本研究は,日本語における受動構文が推意(implicature)として有する意味に関する仮説を検証することから,語用論的な原理に関わる一般化を行うこと,統語論に関わる問題を整理し,原則・規則について提案を行うことである。平成19年度は,3年間の研究の最終年度にあたり,前年度までの成果を精緻化しつつとりまとめるとともに,今後の研究課題につながる論点を整理した。具体的な成果は以下の3点である。 第1に,構文そのものに無標の解釈が付与されており,その解釈は前提の追加で不成立とすることができる点で推意の特性を持つことが,受動構文についても論証できた。さらに,このような構文推意は,受動構文以外のテンス・アスペクト・モダリティ(TAM)に関する解釈についてより顕在的であることがわかり,述部複合構造についての統語と語用の際面性(interface)について分析を加えた。第2に,語用原理に関わる一般化として「動的(線条的)語用論」を提案した上で,その枠組みを整えた。これは,意味解釈を時間軸上に展開する認知的プロセスとして捉えるもので,さらに発展的な応用が見こまれる。今後,作業記憶や長期記憶といった心理学的な概念との整合性を図り,有効な分析装置とする予定である。第3に,受動構文といった統語的テーマを語用論から文法論のなかで新たに位置づけるため,これまでの文法理論史を踏まえて,他の統語現象と整合する文法体系について検討を加えた。これは,課題の整理までが終わっているが,今後文法教育などとの連携に配慮した体系化と具体化についての提案を行うことを考えている。
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Research Products
(4 results)