2006 Fiscal Year Annual Research Report
メンタルスペース理論に基づく仏英日本語の時制対照研究
Project/Area Number |
17520259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井元 秀剛 大阪大学, 言語文化研究科, 助教授 (20263329)
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Keywords | メンタル・スペース理論 / 対照研究 / 時制 / スペース / 視点 / 過去 / 条件文 |
Research Abstract |
平成18年度は、当初の研究実施計画で提示した 1)時間を表すマーカーである接続詞にまつわる時制制約 2)未来形と現在形の価値に関する対照研究 の2つのテーマに加えて 3)時制の転換と視点の移動について について取り組んだ。下記11にあげた研究成果はこの1)と2)に関するもので、主として平成17年度に行われたものである。英語のwhenとフランス語のquand、日本語の「〜とき」とでは時制選択の基準とありようが本質的にことなることがわかってきた。特に日本語では従属節の時制を決定する基準点V-POINTが主節のEVENT時に移動し、そこからの相対的時間関係に基づいて時制を決定するのに対し、英語フランス語ではあくまでも主節と同じ位置にあるBASE/V-POINTからの位置によって定まる。さらにフランス語と英語では未来形の価値が異なり、時制の基準点を設定する働きも異なることが明らかになった。 一方3)は主として今年度とりこんだ課題で、視点移動のありかたが、英仏語と日本語で異なるという上記研究成果をふまえて、条件文にしばしば見られる過去性の検討を行った。仮定文ではこれら3つの言語で共通して現在の事実に対する仮定を過去形で表現されることがあるが、日本語の場合は相対的に、仮定を行うスペースからみた過去の事態ととらえることで、過去性が説明できるのに対し、英仏語の場合、過去性は非現実性のマーカーとして働いており、時間の指令という意味から派生してきたとは考えられない。過去性は認知的に確実性とむすびついており、過去性と仮定性の関係は未来性と推量予測がむすびつくのと同じような共通した認知基盤にもとづく転用と考えた方がよい。この意味でメンタルスペースが記述するPASTの定義も時間軸上の位置関係にとどまらず、認知的な意味合いまで拡張する必要がある。ということなどがわかった。
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