2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランス語における事態の主観的把握の方策の研究
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17520260
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
春木 仁孝 大阪大学, 言語文化研究科, 教授 (00144535)
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Keywords | 単純過去 / スキャニング操作 / 複合過去 / 結論付け / 範疇化 / 認知言語学 / 文法化 |
Research Abstract |
2006年度5月に『言語文化共同研究プロジェクト 言語における時空をめぐってIV』に発表した論文「自伝における過去形の用法について-Barbaraの自伝における単純過去-」において、複合過去を基調とするテキストに現われる単純過去に共通する特徴をある程度整理して、予備的な考察を加えた。その後、資料をさらに加えて分析と考察を進め、7月に東京大学で開かれた日本フランス語第233回例会において発表した。そのときの議論も踏まえて最終的に「Ce fut ma premiere rencontre avec le passe simple.-スキャニング操作と単純過去-」というタイトルの論文にまとめ、言語文化研究科の紀要「言語文化研究第33号」に投稿して、査読を経て採用され現在印刷中である。 上記の論文では、単純過去の使用をスキャニング操作の行われた痕跡として分析した。すなわち、過去の事態の数え上げや、複数の事態または単独の事態に対する結論付けおよび範疇化などが行われる場合には、事態の外側から事態のスキャニングが行われているのであり、それは単純過去がもともと持っている事態を完了したものとして全体的に捉えるという機能の典型的な場合が単純過去の機能と再解釈されて、複合過去基調のテキストにおいてもスキャニングが行なわれる場合には単純過去が現われやすいのだと考えられる。そして、複合過去基調のテキストにおいて用いられるこのような場合の単純過去は、その基本的機能が特権化されいわば一種の文法化を受けたものとして捉えることが出来る。 以上のように、今年度は事態の主観的把握の方策としての単純過去の機能について、認知的な観点からの新しい仮設を提示することが出来た。
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