2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナイル諸語の通時的研究-ナイル諸語比較語彙集の作成-
Project/Area Number |
17520262
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
稗田 乃 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90181057)
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Keywords | ナイル諸語 / 歴史言語学 / クマム語 / アフリカ言語学 |
Research Abstract |
東アフリカ、ウガンダにおいてナイル諸語の1つであるクマム語を調査した。クマム語の世界初となる語彙集と文法事を準備中である。平成18年度の調査では音声学・音韻論に関して、とくにクマム語のリズムを明らかにした。リズムは、音声レベルの現象と考えられるが、リズムがクマム語の形態音韻論において重要な役割を果たすことと発見した。この事実は、音声レベルと形態音韻論レベルの間にインターフェイスの存在を仮定しなければならないことを示している。また、リズムは、通時的な子音の脱落と母音による代償延長の現象において重要な決定をおこなうことを明らかにした。したがって、リズムの研究なしにはクマム語を含む近縁諸言語の通時的研究を進展することができない。この成果については、平成18年度11月22日にケルン大学アフリカ学研究所におけるコロキウムにおいて口頭発表をおこなったほかに、平成19年度にパリで開催される国際学会第10回ナイル・サハラ言語学コロキウムにおいて、さらに修正をしたうでで発表することが決定している。統語論に関して、クマム語が受動文をつくることができず、受動文にあたる文は中動相文で表現することを明らかにした。中動相文をつくるとき、その主語にあたる名詞が意味的に行為者になるか、受動者になるかは、動詞が本来持つ意味、すなわち、動詞のアクチオンザルトによって決定される。また、クマム語の動詞は、英語のような自動詞と他動詞の区別ではなく、状態動詞と行為動詞と呼べるような区別が重要であることを発見した。現在編集中の語彙集は、動詞の部門においてこれらの動詞のアクチオンザルトについての情報を含んだものにする予定である。ケルンでは残存資料の収集ならびに研究発表と研究情報の収集をおこなった。成果物としては英文論文1編と日本語単行本1冊を出版した。
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