2005 Fiscal Year Annual Research Report
パーフェクトにおける事象の時間構造への写像および参照時の設定に関する意味論的研究
Project/Area Number |
17520264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山森 良枝 (松井 良枝) 神戸大学, 留学生センター, 助教授 (70252814)
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Keywords | パーフェクト / 日本語 / 主観性 / 参照時 / 時制 |
Research Abstract |
パーフェクトは、Reichenbachによって"E<R, S"(出来事時<参照時=発話時)"と表示されたとおり、時系列にそって線的に展開される会話において、(コマ漫画のように)フラッシュバックや反実仮想など、異次元の可能世界を[今・ここ]の現実世界に導入し、談話を構築していくための最も重要な装置の一つである。ところが、日本語のパーフェクトについては、従来の研究のほとんどが、このような談話機能に言及するものの、パーフェクトの多様な意味の記述に終始し、スル・シテイルの対立を軸としたテンス・アスペクト体系という文法カテゴリーの下位範疇の1つに位置づける以上の分析を行ってこなかった。 本年度は、これに対して、コマ漫画のように事象を時系列に写像して談話世界の構築に関るパーフェクトの側面に重大な関心を払い、従来議論されることのなかった日本語のパーフェクトの構成原理とその意味特性を明らかにすること、そして、そのために必要な文が表す事象構造を記述し分析するための理論的枠組の構築を目指して基礎的作業を中心に実施した。 具体的に、まず、事象構造と時間構造および談話構造との相互作用の実態を把握するために必要なデータを収集した。とりわけ、自然な会話の中から、従来の説明では扱えない事例を、それを取り巻く文脈と共に採取した。これらの主要データについて、(1)時間副詞との共起可能性(p-definiteかnon-p-definiteか)、(2)事象構造、(3)参照時の指示対象、(4)話者の知覚・視点、(6)文脈の項目について検討した。その結果、予測の通り、事象の知覚者および経験者としての話者の視点が、(1)〜(5)について重要な関与性をもつことが明らかになった。 以上に基づいて、パーフェクトにおける話者の視点・主観を分析に適切に取り組む方法論を確立するための手立てとして、従来の束縛理論を意味論的立場から再検討したSchlenker等の最近の研究成果を参照することにより、より妥当で精度の高いパーフェクト分析の足がかりを構築するための基礎を確立した。
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Research Products
(4 results)