2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520266
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 星児 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40108113)
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Keywords | 朝鮮資料 / 日本資料 / 朝鮮語音韻史 / 日本語音韻史 / 尊海渡海日記 / 捷解新語 / 朝鮮通信使 / 朝鮮漢宇音 |
Research Abstract |
本研究は、従来別々に取り扱われてきた「日本資料」と「朝鮮資料」を総合的に調査・研究し、諸資料の言語史的位置づけと総合的な言語史研究をおこなうことにある。この観点から、18年度は、以下のような調査と研究を行った(1は日本資料、2は朝鮮資料である)。 1)「尊海渡海日記」に記された朝鮮語の研究 「尊海渡海日記」は1539年に成立した尊海の朝鮮紀行文であるが、その中に仮名書き朝鮮語32例がある。この資料(屏風裏面)について、広島県立歴史博物館などで写真撮影をふくむ詳細な調査を行なった。これにより従来の翻刻の誤りを正すことができた。また、地名については従来の比定を再検討し、同時に32語を言語史的観点から考察した。これにより、アネリ=〓〓〓の解釈、〓〓の写音方法、ウムラウト現象の存在などを明らかにできた。そして、本資料の言語史的資料価値の高さを結論付けることができた。この成果については、朝鮮語史研究の研究会(於東京外国語大学AA研)で発表を行い、本学の『文化共生学研究』に論文を掲載した。 2)『重刊捷解新語』の調査 (1)板木の調査:韓国高麗大学校所蔵が所蔵する『重刊捷解新語』の板木60枚(120面)を現地調査し、摩滅状態、埋木の有無、東洋文庫本との比較を行い、画像の記録を行なった。これにより印刷物によって推定していた埋木の確認が出来たほか、他の埋木、摩滅と刷りとの関係などを今回初めて明らかにすることができた。 (2)韓国中央図書館本と東大小倉文庫本の調査および諸本の比較 今年度、中央図書館本と小倉文庫本を調査することができた。これにより、現在までに知られている重刊本諸本6本(板木新摺を含めれば7本)全てを比較対照することが可能となった。刷りの前後関係の推定は、未だ確定的ではないが、初期刷り:奎章閣本、中期刷り:中央図書館・濯足文庫本・小倉文庫本、後期刷り:一蓑文庫本・東洋文庫本の順序となるものと思われる。
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