2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520266
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 星児 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40108113)
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Keywords | 朝鮮資料 / 日本資料 / 朝鮮語音韻史 / 日本語音韻史 / 尊海渡海日記 / 捷解新語 / 朝鮮通信使 / 全一道人 |
Research Abstract |
本研究は、従来別々に取り扱われてきた「日本資料」と「朝鮮資料」を総合的に調査、研究することにあり、そのために、諸機関が所蔵する資料を調査、収集し、デジタル化を図ったうえで、諸資料の言語史的位置づけと総合的な研究を行うことにある。この観点から、19年度は以下のような調査と研究を行った。 1)韓国中央図書館所蔵『重刊改修捷解新語』の版本と板木の調査研究 昨年度現地で複写できなかった部分を今年度複写した。これにより、重刊本については、版本6種(奎章閣本、中央図書館本、一蓑文庫本、濯足文庫本、小倉文庫本、東洋文庫本)が完全に揃った。さらに18年度に調査した板木(およびその印刷)を加え、6版本の前後関係を考察した(昨年よりの継続研究)。その結果、奎章閣本が原刷りに近いこと、東洋文庫本が最も後刷り、残りがその中間にあることがほぼ確証された。また濯足文庫本が奎章閣本に近い可能性も指摘できた。この成果については、『文化共生学研究』に論文を掲載した。 2)中央図書館蔵『海槎日記』(趙〓)、『全一道人』(雨森芳洲)の調査 趙〓『海槎日記』は日本語書簡文とハングル訳を数多く掲載する特異な資料で、従来活字本(朝鮮古書刊行会本)のみが知られているが、19年度中央図書館蔵の筆写本を調査し、活字本と比較した。結論的には、筆写本は脱落等が見られるが、活字本を補うものであることが分かった。『全一道人』については、芳洲文庫の許可を得て原本を調査し、既刊影印と対照しつつ朱書き部分を精査した。これにより従来の欠を多数補うことができた。 3)資料のデジタル化と全体的まとめ 『重刊改修捷解新語』板木画像のデジタル化、通信使関係の資料の整理と画像デジタル化をおこなった。その他、『王朝実録』記載の日本語の収集と分析を継続した。 最終年にあたり、全体的なまとめにとりかかった。日本資料としての「尊海渡海日記」などの研究、朝鮮資料としての『重刊改修捷解新語』などの研究をとおし、両資料の相補性を確認することができ、日本語、朝鮮語の言語史に関する新たな知見も得ることができた。
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