2005 Fiscal Year Annual Research Report
「語等置の方法」を用いたゲルマン語動詞体系生成に関する比較言語学研究
Project/Area Number |
17520270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 助教授 (80207117)
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Keywords | 語等置 / 動詞体系 / ゲルマン語 / 印欧語 / 古英語 / 過去現在動詞 / 強変化動詞 / h_2e-活用理論 |
Research Abstract |
平成17年度において、主に以下の二点を達成した。 1)ゲルマン語動詞体系における「特異な」動詞と考えられる過去現在動詞14例に関して「語等置」の方法に基づく詳細な分析を実行した結果、従来唱えられてきた説の問題点を克服する新たな知見を得た。従来の比較言語学研究上の解釈では、ゲルマン語の過去現在動詞の現在時制形態は印欧祖語の静的完了(stative perfect)の反映形であるというのが一致した説明であったが、この説では、畳音(reduplication)の消失(の有無)、語根母音がゼロ階梯を示す不定詞の形態、3人称複数形の語尾、等に対して十分な説明が与えられない。また、静的完了形が祖語で存在しなかったと考えられる例に対しても十分な説明ができない。J.Jasanoffが近年唱えた「h_2e-括用理論(h_2e-conjugation theory)」の立場から、ゲルマン語過去現在動詞の現在時制形態は基本的には、印欧祖語動詞体系に存在した静的自動システム(stative-intransitive system)を反映したものであるが、静的完了(能動)形態のみならず、中動形態(中動現在や中動完了)をも反映したものであり、それらの混交(conflation)によって生成したと考えられることを明らかにした。これらの点に関する詳細な議論を原稿に表すことを実行した(未刊行)。 2)ゲルマン語動詞体系における他の「特異な」特徴として、強変化動詞VI,V類の過去複数形に、語根母音が延長階梯を示すということがある。これらの「特異な」形態の生成には、印欧祖語におけるナルテン動詞(Narten verb)の未完了(imperfect)形態が潜んでいると考えられることを明らかにした。この観点の基本的な議論を一遍の単行論文として公刊した(裏面11研究発表の欄参照)。
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Research Products
(1 results)