2008 Fiscal Year Annual Research Report
「語等置の方法」を用いたゲルマン語動詞体系生成に関する比較言語学研究
Project/Area Number |
17520270
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 Kyushu University, 大学院・言語文化研究院, 准教授 (80207117)
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Keywords | 語等置 / 動詞体系 / ゲルマン語 / 印欧語 / 古英語 / 過去現在動詞 / 強変化動詞 |
Research Abstract |
これまでの印欧語比較言語学研究の中で、十分な歴史的説明を与えられなかったゲルマン語過去現在動詞(preterite-present verbs)の現在形の発達に関する詳細、および語根が特異な延長階梯を示す強変化動詞(strong verbs)IV,V類の過去複数形の発達に関する詳細について、「語等置の方法(the method of word equation)」を援用して新たな説明を提案することができた。印欧祖語の完了形と別のもうひとつの動詞形態の形態的混交(morphological conflation)という仮説で首尾一貫した説明ができることを示した。 過去現在動詞の現在形の歴史的発達については、印欧祖語の状態的完了形(stative perfect)と非テーマ母音的中動現在(athematic present middle)の形態的混交が最も基本的なパターンとなっていたということを提唱した。「語等置の方法」から得られる経験的証拠から、^*wait-'know', ^*daug-'suffice, avail'など7つの過去現在動詞がこのパターンそのものにより発達したことを明らかにした。他に、ゲルマン語派分離の時点で中動現在形を欠いていたと考えられる^*aig-'possess'と^*og-'fear'は、完了能動形と完了中動形の混交で、そして対応する完了形を欠き中動現在形のみが存在していたと考えられる^*kann-'know', ^*ann'love', ^*mag-'have power'は中動現在形を元に、状態的完了形の構造の影響を受けて生成したということを論証した。(この論考は図書1にまとめられている)。 ゲルマン語強変化動詞IV,V類の過去形は、祖語から受け継いだ結果的完了形(resultative perfect)とナルテン未完了形(Narten imperfect)が混交してできたパターンが元になって発展したことを、同様に論証した、(この論考は雑誌論文1にまとめられている。)
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Research Products
(2 results)