2007 Fiscal Year Annual Research Report
調音動作の組織化とプロソディ:英語における発音変異形の調音パラメタ音声学的分析
Project/Area Number |
17520278
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 光宏 Nihon University, 経済学部, 准教授 (10256787)
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Keywords | 調音動作 / プロソディ / 発音変異形 / 調音パラメタ / 調音タイミング |
Research Abstract |
1. 韻律構造の位置に条件付けられた子音の調音動作 韻律構造(prosodic structure)における位置に対応した調音動作の変動を検討するために、マルチチャンネル調音データベースを利用して予備的調査を実施した。この予備的調査の主要課題は、先行研究では明らかにされていない機能語における調音動作の特徴を探ることにある。無声歯茎破裂音[t]と有声歯茎鼻音[n]を調査対象として、EMAを利用して記録された舌尖・舌端の運動における速度、位置、継続時間を測定した。そして,機能語と内容語に対応する特徴と韻律構造の位置(発話頭位・中位・末位)における特徴を比較・検討した。韻律構造の位置における変動を分析した結果、機能語においても、韻律構造の領域頭位における調音の強化(domain-initial strengthening)や発話・句末位における長音化(utterance/phrase-final lengthening)が観察された(先行研究では内容語を対象として観察されている)。そして、語範疇(機能語と内容語)における変動を分析した結果、発話中位において機能語の継続時間が著しく短く、その速度が内容語に比較して遅いことが分かった。韻律構造の位置と語範疇の相互関係、そして様々な調音パラメタ間の関係について、今後更に検討を進める予定である。 2. 有声歯茎側面接近音/1/(L音) 有声歯茎側面接近音の3つの主な異音(明るいL、暗いL、Lの母音化)を検討するための予備的調査を実施した。EMAによって記録された舌尖・舌端、舌背、両唇、顎の運動を対象として、速度、位置、調音タイミングについて観察・検討した。明るいLでは、舌尖・舌端→舌背の順に調音運動が行われ、暗いLでは、反対の順に制御されることが確認された(先行研究の結果と一致する)。そして、暗いL(特に音節主音的L)とLの母音化では、調音時に顎の運動速度が最低を示す傾向が観察された(明るいLでは、後続母音の調音時に最低速度を示す)。単語内の位置と調音パラメタの変動との関係について、今後更に検討を進める予定である。
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