2005 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世悉曇資料・唐音資料を視野に入れた日本語音節構造史の研究
Project/Area Number |
17520292
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥爪 周二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70255032)
|
Keywords | 悉曇 / 唐音 / 音節構造 / 拗音 / 撥音 / 二重母音 |
Research Abstract |
悉曇資料・音訳漢字音資料・唐音資料(中世唐音・近世唐音)・一般の漢字音資料・オノマトペ資料(抄物)などの、各種資料からの具体的データの収集するために、京都東寺観智院・金沢大学文学部・富山市立図書館・国立国会図書館・都立中央図書館など、日本国内での文献調査を行った。特に、東寺において、康平四年本『梵字悉曇章抄中抄并序』(第二〇四箱一八号)、平安初期写『悉曇章<霊巌寺和尚本歟>』(第二〇一箱二〇号)という、きわめて閲覧困難な資料を閲覧する機会を得たことは、今年度の特記事項である。 一般の日本漢字音(呉音・漢音)においては、「シャ・ジャ」以外のア段拗音単独形・「シュ・ジュ」以外のウ段拗音短音形・「シュン・ジュン」以外の「拗音+撥音」形・すべての「拗音+イ」形が存在せず、また、「ヒュ・ビュ・ミュ・ヒョ・ビョ・ミョ」のような唇音と奥舌母音が組み合わさる拗音が存在しないなど、拗音を含んだ音節のバリエーションに特異な制限があるが、梵語音(平安時代以来)および中世・近世唐音においては、この制限が大幅に緩和されている。そこで、今年度は、問題となる拗音を含んだ音節のバリエーションと、中世唐音資料・近世唐音資料との対照表を作成した。対照表の作成は継続中であるが、今年度は、中世唐音資料として、慶長版『聚分韻略』<虎関師錬>、近世唐音資料としては『磨光韻鏡』<文雄・訳官系唐音>・寛文二年版『禅林課誦』<黄檗唐音>の、計三資料を利用した。 また、本科研費を利用した文献調査の成果として、11月に、第九十三回訓点語学会研究発表会(於仙台市戦災復興記念館)において、「濁音・喉内鼻音韻尾の標示レベルの相対的関係」と題する発表を行った。発表した内容は、訓点語学会の機関誌『訓点語と訓点資料』に掲載予定である(印刷中)。
|