2008 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世悉曇資料・唐音資料を視野に入れた日本語音節構造史の研究
Project/Area Number |
17520292
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥爪 周二 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (70255032)
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Keywords | 音節構造 / 悉曇 / 唐音 / 漢字音 / 梵語音 |
Research Abstract |
本年度も東寺での文献調査を行った。本研究計画と密接に関わる文献として、『胎蔵念誦次第』一帖(第二七八箱一一号)があった。この文献は、保安五年(1128)の加点であり、真言の特殊な読み癖が多く見出される、早い資料として貴重である。「怛麼(二合)〈マン〉南」「夜〈ヤム〉弭(濁)」「=〈ラン〉檸(濁)〈タ〉」「荼〈タン〉多」「戌〈シユン〉駄(濁)」のように鼻音韻尾が挿入される例、「瑟〈シユン〉拏(濁)〈タ〉」「末〈マン〉駄(濁)那〈ナウ〉」のように入声韻尾が鼻音韻尾に交替する例、「輸〈シユチ〉睇〈テイ〉」のように入声韻尾が挿入される例などが見出される。「驕〈ケウ〉答〈タム〉摩仙」「枳くキン〉那〈ナ〉=」「三摩〈マン〉=(濁)」などは、それぞれ「嬌怛麼(Gautama)」「緊那羅(kimnara)」「三曼多(samanta)」のような、別の音訳文字列(同語・別語によらず)の読みの混入などの可能性もあり、更にデータの収集・整理が必要である。また『大毘盧遮那広大成就儀軌下』一巻(第二九箱一号)は、康平二年(1059)・延久二年(1070)の加点であり、梵語-rに対するヲコト点(西墓点)の使用等、独特な事象が散見される資料である。 また、本年度は当研究計画の最終年度であり、前年度までの作業を集大成するために、中世唐音・近世唐音・梵語音について、音節バリエーションの対照表を作成した。この対照表を作成するための基礎資料として、禅宗で重用される首楞厳経の陀羅尼に、中世唐音(首榜厳注経・首楞厳義疏注経・首楞厳経義海の3点による)・近世唐音(禅林課誦2種による)の付音のある資料を収集・整理し、一覧できる形にした。『聚分韻略』『磨光韻鏡』等の基本資料に、これらを加え、エクセルにより対照表を作成した。
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