2005 Fiscal Year Annual Research Report
東北日本・日本海沿岸地域を対象とする角筆文献データベース作成に向けての基礎的研究
Project/Area Number |
17520294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 恵 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60163010)
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Keywords | 角筆文献 / 角筆(字指・字突) / 八田文庫 / 山本半右衛門家 / 近思録 / デジタル撮影 / 角筆スコープ / 新潟県 |
Research Abstract |
本研究は、将来的には東日本全域の調査を見据えながらも、まずは新潟県下の調査を綿密に行い、県内全域の角筆文献の実態を分析・検討した上で、日本海沿岸を北上しつつ山形県・秋田県・青森県下の角筆文献発掘調査を実施して、東北日本・日本海沿岸地域の角筆文献データベースを作成し、あわせて同地域における言語と文化を、角筆文献を通して通時的に解明することを目的としている。 初年度の平成17年度は、新潟県下各地の調査を実施した。佐渡市(旧佐和田町)・県立佐渡高校人田文庫、佐渡市(旧真野町)・山本半右衛門家荏川文庫、三条市(旧下田村)・諸橋轍次記念館、加茂市・法華宗本量寺、新潟市・県立文書館である。県立文書館では、新潟市(旧亀田町)・渡辺家文書、新潟市(旧西川町)・笠井家文書、魚沼市(旧広神村)・桜井家文書を調査対象とした。 このうち、佐渡市・県立佐渡高校八田文庫所蔵の『近思録』全3冊は、周密に角筆が加点され、すでに平成9・10・11年度にそれぞれ1日ずつの予備調査を行っているものであるが、今般8月から11月までの間に4泊5日の調査を3度実施し、全巻の角筆抄出とそのすべてのデジタル撮影を完了した。 また、同じく佐渡・山本半右衛門家荏川文庫から、筆記用具としての角筆(ただし江戸時代には字指・字突と称するらしい)2本が見つかった。新潟県下では初めての発見である。いずれも竹製で、このうちの1本は先を尖らせてあり、筆記に用いたものと察せられる。時代的には、当家から角筆文献が多く見つかる8世雪亭(山本恒)の時代のものかと目され、雪亭その人が使用した用具の如くに推測される。もう1本は漆を施してあり珍重されたもののようであるが、先端に向かって少しずつ細くなる四角柱状で、最先端もまた四角である(尖っていない)。そのため、後者は正に字指・字突の用のみに供せられたものであって、筆記に用いられたとは考えにくい。
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