2005 Fiscal Year Annual Research Report
書記史・文体史研究資料としての平安時代仏書漢字仮名交じり文の研究
Project/Area Number |
17520299
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
山本 真吾 白百合女子大学, 文学部, 教授 (70210531)
|
Keywords | 東大寺諷誦文稿 / 七喩三平等十无上義 / 諷誦文類 / 仏書漢字仮名交じり文 / 書記史 / 文体史 |
Research Abstract |
本年度は、九世紀の書写に係る東大寺図書館蔵の七喩三平等十无上義の原本調査を行った。本文献は、万葉仮名本位の仮名が宣命書によって、漢文に交じって表記され、さらに、その漢文には朱のヲコト点及び仮名も加点されている。本文の仮名と、漢文に加えられた朱のヲコト点及び仮名との関係は従来未詳であったが、本研究の推進によって、すでに本文データの公表されている、本文献と同時代の書写に係る東大寺諷誦文稿との比較によって、概ね以下の点が明らかになった。 七喩三平等十无上義の本文は、訓点の施されることを前提として訓読されるべく書かれた文章で、仏典に準拠する変体漢文を基調とし、部分的に訓読を補足するために任意に仮名を交えたものと解される。本文献は、一定の問答の型が繰り返される文章形式で経論などを適宜引用しながら注釈したものであり、その読解に資するために仮名が組み込まれたものとおぼしい。その仮名の内容は、朱の訓点(ヲコト点及び仮名)とほぼ共通する基盤にあるが、ヲコト点では表示することが難しいものが多くを占め、それは「キラフ」「ノタマフ」などの実詞的要素や、助辞的要素であってもその相互の承接順序をより明示的に表す必要のあった場合などに書き加えられたものと見られる。 東大寺諷誦文稿が自立語の仮名書き例を多く含むことや、また語順や附訓の表記などの観点からも、七喩三平等十无上義とは多く異なっており、本文献は傍訓も少なく、仮名書き例も併用されるヲコト点の補充成分として解釈し得るものであって、漢文訓読の書き下しの域に留まるものであって、別の系統と認めるべきもののようである。
|
Research Products
(4 results)