Research Abstract |
日本語教育においては,いつ,どこで,誰に対しても,安心して使える「正」の価値観を含む言葉を中心に扱いコミュニケーションが円滑に進むよう指導しているが,本研究は「危ない言葉」すなわちその使用にあたって人間関係や社会背景の十分な理解を必要とする「負」の価値観を含む言葉について分析し考察を加えることを目的とする。「負」の価値観を含む言葉は,親疎,公私,上下,内外,丁寧・非丁寧といったパラメータによって言語使用域が強く制限され,文化的背景や社会背景,習慣や人間関係など様々な観点からの理解が必要とされる。 本研究では,まずこれまでの研究で構築した日本語,タイ語,中国語(香港・台湾),韓国語の「危ない言葉」のコーパスデータを基に、社会言語学的な観点から,言葉の使用領域,や対人関係等,各言語の「危ない表現」の語用論的なフレームを明確にするための分析を開始した。また「危ない表現」が使われる言語使用場面を選定し,それを視覚的に提示できる画像情報の精査を行った。それを基に,各言語の「負」の価値観を含む言葉の特性を,発話行為及び発話意識の観点から明らかにすることを目的として,日本およびタイ,韓国,香港,台湾で「あぶない表現」の使用意識を調査するための調査票の案を作成し、研究協力者の協力の下、各地でパイロット調査を実施した。 来年度は、調査票を完成させ本調査を実施し,データを収集,整理,分析することにより,社会言語学的,語用論的枠組みを検討していくことが課題である。
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