2007 Fiscal Year Annual Research Report
在日外国人の待遇行動の実態と日本語教材に関する総合的研究
Project/Area Number |
17520351
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
山下 暁美 Meikai University, 外国語学部, 教授 (10245029)
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Keywords | 日系ブラジル人 / 待遇行動 / 談話分析 / 敬語 / 在日外国人 |
Research Abstract |
自然談話の音声収録結果の分析によって、在日日系ブラジル人が用いる待遇表現の実態を明らかにし、日本語教育教材への応用を考えるのが本研究の目的である。ここでとりあげる待遇表現とは、文法体系に組み込まれた敬語は、もちろんであるが、相互作用に必要なあいつち、省略など、広い意味で待遇性をおびた表現も含む。日系ブラジル人が、家庭で幼少時から身につけてきた日本語は、流暢ではあるが、スピーチスタイルの相違から、誤解を生じたり、正しく人格が理解されないなどの問題を引き起こしていると思われる。在日日系ブラジル人の談話分析を好井裕明・山田富秋・西阪仰(1999)『会話分析への招待』(世界思想社)を参考に行なって、資料編として冊子を作成した。また、BTSJ(Basic Transcription System for Japanese)、宇佐美まゆみ(2006)『自然会話分析への言語社会心理学的アプローチ』(言語情報学研究報告13)によって、自然談話の分析を行い、資料編2として冊子を作成中である。分析の結果、見られたいくつかの傾向は以下のようである。 1.日系ブラジル人は、会話促進に必要なあいづちの回数が少なく、十分でない。 2.あいづちの種類は多くない。 3.母語話者があいづちを入れても、話し手の日系ブラジル人は、あいづちを入れた相手を、次の話し手として選択しない。 4.言いよどみがあまり見られないことによって、母語話者は、話題を共有した満足感を感じない。 5.「です」「ます」は全体に少ない傾向があるが、個人差も大きい。 このように、日系ブラジル人の談話には、聞き手の話す意欲をそぐ表現が無意識的に含まれている。日本語会話においては、聞き手は、さまざまな言語表現によって、聞き手の役割を果たしている。あいづち、いいよどみ、「です・ます」使用の理解と習得などが必要であることが明らかになった。これらの分析結果を教材作成と関連付けて、カナダ日本語教育振興会で「在日日系ブラジル人上級日本語学習者の待遇表現の分析と考察」と題して発表し、拙著『海外の日本語の新しい言語秩序』(2007・三元社)でも資料として引用した。
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Research Products
(1 results)