2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520415
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高松 洋一 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90376822)
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Keywords | 史料学 / 西アジア史 / オスマン朝 / アーカイブズ / 古文書学 |
Research Abstract |
オスマン朝のアーカイブズの全体像解明のため従来蓄積してきたデータを補完する目的で、平成19年8月31日から9月23日にかけ、イスタンブルの総理府オスマン文書館において、オスマン朝の官僚機構におけるアーカイブズ管理に関する調査を行なった。 大宰相府および財務長官府を出所とする主に18世紀後半に成立した帳簿十数点(キャーミル・ケペジ分類大宰相公用人書記局記録簿、枢機勅令簿、皇帝親書簿、大宰相府辞令局辞令簿)、文書数百点(大宰相府エジプト州関連文書、ジェヴデト分類:市政、内務、造幣、特別州、外務、経済、教育、財政、公共事業、宮廷関係諸文書、財務長官府主計局エジプト地方庫関連文書、ハットゥ・ヒュマーユーン分類文書)を閲覧した。閲覧した帳簿と文書の画像データの複写をとった。 前年度の調査結果を受け、今回の調査では、今日わずか3冊だけ残存している大宰相府における文書の受信記録簿のうち、もっとも分量の少ないKK46の註記テキスト部分をラテン文字によるトランスクリプションのかたちで筆写することに力点を置いた。これによってKK46に関しては、いちおう全体のトランスクリプションを完成することができた。またKK46では黒と朱の2色のインクが使い分けられているが、テキストのどの部分がどちらのインクで記されているかのチェックを行なった。この作業を通じて、オスマン朝の大宰相府が一定期間に接受した文書の発信者と様式が具体的に判明し、これをいかなる形で記録しアーカイブズ管理をおこなっていたかが明らかとなり、またこれらのデータをもとに大宰相府に蓄積されたアーカイブズをメタデータのレベルで復元することが可能となった。 これらの成果の一端は、樺山紘一責任編集『歴史学事典【第15巻 コミュニケーション】』弘文堂2008年(5月下旬刊行予定)所収の「公文書3(イスラムの)」という項目執筆の際に生かすことができた。
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