Research Abstract |
本研究では,近代国民国家の成立から,日本の敗戦を経て現在までを対象時期にすえ,それらを時期区分して,部落問題をめぐる被差別部落内外の認識のあり方を,在日朝鮮人,アイヌ,沖縄,女性,ハンセン病者と比較しながら,各時期の特徴を明らかにした。 法制的には「日本人」の境界内部に位置しながら,しばしば非「日本人」とのぎりぎりのところに置かれ,ときには外部にも位置づけられた被差別部落の人びとに対して社会の側が与えてきた徴表は,種姓,血筋,「人種」,民族」であった。それゆえ,抵抗の側も,その道具を使うことを避けて通れなかった。したがって,人種論,民族論(それらは近代の概念だが,近世からの種姓,血筋とどこか変わったのかを区別する必要がある)を軸に据えることが必要である。それゆえまず第1に,被差別部落の人びとが「人種が違う」という徴表を付与されてきたがゆえに,上述のような観点から日本人種論のなかでそのありようの変遷を明らかにした。第2に,その一方で被差別部落,在日朝鮮人,アイヌの人びとたちに対する排除,差別は,しばしば「野蛮」という徴表を伴ったことから,「文明化」すなわち環境要因によって第1の徴表が改変可能と考えられてきたのか否か,「人種」と「文明化」,ひいては遺伝と環境,の両者の相克を追った。第3に,そうした差別の受け皿となっている要素に「世間」の存在があり,とりわけ戦後については,その要因を絡めながら分析を行った。
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