2006 Fiscal Year Annual Research Report
「出雲国正税返却帳」を中心にした平安時代中期財政と公文勘会の研究
Project/Area Number |
17520429
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大日方 克己 島根大学, 法文学部, 教授 (80221860)
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Keywords | 出雲国 / 正税返却帳 / 九条家本延喜式 / 受領功過 / 出雲守 |
Research Abstract |
本年度は、年度当初計画に基づいて以下の点を検討した。 1.「出雲国正税返却帳」(以下、本帳と略記)の翻刻を作成した。その際、以下の点について留意した。(1)九条家本延喜式の表裏関係を正確に対応させた。(2)また九条家本延喜式巻9・巻10冒頭の欠失と近世における補写部分について、他の延喜式古写本との比較から、その原形を推定し、紙背に本帳が存在していたとして、本帳欠失部分の推定復原を試みた。表裏関係と本帳復原の成果については、2007年9月16日島根史学会大会(島根県民会館)で口頭報告した。翻刻は長大な分量になるため、最終年度の研究成果報告書に収録する予定である。 2.本帳作成事情の検討として、11世紀における出雲守、源忠規・大中臣頼信・大中臣永清・藤原章俊・藤原宗実・藤原行房・藤原清綱・藤原経仲の在任期間の確定および彼らの動向を明らかにする作業を進めた。とくにこれまで在任期間が不明だった摂関家家司の藤原行房に注目し、その在任期間を絞り込むとともにその動向や周辺の人物の検討を進め、本帳作成に深く関わっており、単なる「儀礼としての文書」ではなく、受領功過のなかで本帳が作成された事情をほぼ明らかにできた。これらの成果については本帳復原とあわせ上記島根史学会大会で口頭報告した。 3.本帳の記載内容についても、「勘出」の概念、東三条院の算賀・送葬と出雲国との関係、杵築大社修造と本帳の関係についての検討を進めたが、まだ途中であり引き続き最終年度に向けて深めていく予定である。
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