2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世武士団安芸小早川領域における石塔の基礎的研究-宝篋印塔・五輪塔を中心に-
Project/Area Number |
17520448
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
舘鼻 誠 専修大学, 文学部, 兼任講師 (00384678)
|
Keywords | 中世史 / 石塔 / 宝篋印塔 / 五輪塔 / 墓 / 武士団 / 小早川 / 日本史 |
Research Abstract |
本研究は、小早川領域における石塔(宝篋印塔・五輪塔)の所在・個数確認、実測作業を通して、中世武士団の特質を読み解くことにある。このため9月8日〜16日に、広島県竹原市、三原市、東広島市、瀬戸田町域、3月30日〜31日に、尾道市、東広島市域において石塔調査を実施し、宝篋印塔41基(内訳は相輪37・笠41・塔身14・基礎33)、五輪塔211基(内訳は空風輪96・火輪211・水輪170・地輪153)を確認し、以下のような新たな知見を得た。 東広島市風早で確認した14世紀前半とみられる宝篋印塔(基礎幅61.0cm・笠幅53.0cm)は、当地の領主風早氏に関わる宝篋印塔と推察され、その大きさから、風早氏は港を押さえる領主として一定の経済力を有し、この海辺領主としての性格故に小早川家臣団のなかでも高い地位を獲得したものと推察される。つぎに竹原市忠海では、町場として発展する16世紀後半以前に遡る室町期の五輪塔の笠(幅46.7cm)を確認した。当該期の忠海の歴史を読み解くうえで貴重な歴史資料であり、次年度も周辺の調査を予定している。小早川氏と領域を接する平賀氏の竹林寺(東広島市)では、15世紀初頭の宝篋印塔(基礎幅60.6、笠幅54.7cm)を確認した。基礎部に小早川領域とは異なる特徴も見られ、石工の違いを想定できる。また小早川氏の氏寺では、石塔に占める宝篋印塔の比率が高く、米山寺では5対2となるが、平賀氏の竹林寺では1対9と五輪塔の比率が高い。小早川氏にとって宝篋印塔がシンボル的な石塔であったことを示唆している。 こうした成果を踏まえ、次年度も引き続き小早川領域、およびその周辺地域の石塔調査を継続し、小早川領域の地域性をあきらかにしていきたい。なお調査の成果は、ホームページでも随時公表している。
|