2006 Fiscal Year Annual Research Report
明代出版史の定量的分析を可能にするための日本現存明版書誌研究
Project/Area Number |
17520469
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 進 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (40168448)
|
Keywords | 明版 / 出版史 / 明代出版文化 / 明代史 / 目録学 / 書誌学 |
Research Abstract |
本年度には著書『書林の眺望』の刊行を果たし、これまで行なってきた日本現存漢籍、特に明版書の調査と研究を通じて得られた成果のうち、既発表のものをまとめて公開することができた。もとよりこれは、旧作の再発表なのではあるが、その刊行に際しては、所収各篇のすべてに訂補を加え、最新の知見をできるだけ盛り込むよう務めた。すなわちこの本の刊行は、それ自体もむろん本年度の成果ではあるが、たとえば明代の書価や帯図本の問題、あるいは個別版本の書誌に関する問題などにつき、これまで述べたことのない新しい見解、知見を示したという点で、より積極的な成果に数えることができるであろう。 このほか、本年度に発表した論文「文化の雅と俗」では、主として坊刻本に見られる意匠の変遷、特に書肆、書賈が自らの存在をどのように表現しているかという問題を通じ、書籍の商品化、出版の商業化がいかに展開したかを論じ、それによって明末の文化が到達した地点とその意味を考察した。この論文を成り立たせている最も主要な史料的根拠は、言うまでもなく書誌調査、特に明版書の調査によって得られた知見であり、その意味でこれは、本研究の成果をはなはだ直截に示したものである。 ただ上記著書、論文の公刊、執筆のため、本年度の書誌調査には必ずしも十分な時間を取ることができず、よって新しく収集された明版書誌は昨年の六割ほど、約140点に止まった。ただしその重点である明代前半期の正徳以前刊本については、約60点の調査を果たすことができ、この数は昨年の70点足らずにさほど劣らない。また知見目録化の作業であるが、これについても本年度に整理しえたのは100点あまりに止まり、その進行が遅れている。今後の二年間で、この問題の解決を図る予定である。
|