2007 Fiscal Year Annual Research Report
明代出版史の定量的分析を可能にするための日本現存明版書誌研究
Project/Area Number |
17520469
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 進 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (40168448)
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Keywords | 明版 / 出版史 / 明代出版文化 / 目録学 / 書誌学 |
Research Abstract |
本年度に発表した論文「明末の出版統制とその後」は、明代中期以来、出版が復興、成長し、さらには空前の隆盛期を迎えるようになったその情勢に対応し、明王朝が実施してきた統制策の内容、意図、結果たどを考察したもので、明代後半期の出版史研究における、ひとつの空白点を埋めることに成功したものと考えている。またこの論文を成り立たせている史料的根拠は、もとより『実録』以下の史籍、および明人の文集や筆記などがその根幹をなしているのではあるが、同時に書誌調査を通じて得られた、明版書の実物に即した知見を用いることによって、その叙述をより具体的、説得的なものとすることができた。 このほか「旧書筆記(八)」には、明代坊刻本の形式的起源を尋ねて、目睹しえた宋版書の若干について考察した文章が含まれ、また『増補明代詩文』の補注・解説においても、部分的には書誌調査から得られた知見を利用した。 ついで本研究のもっとも主要な課題である書誌調査と資料整理、すなわち知見目録の作成であるが、本年度は最終年度の報告をより密度の高いものとするため、調査対象の大半を正徳以前の明代前半期刊本とし、約140点の書誌を収集した。調査点数が昨年度と同程度に止まったのは、明代前半期刊本の調査となると、閲覧時間点数につき、より厳しい制限のある機関に出向くことが多くなるためで、調査回数自体は昨年度より多くなっている。 ただ蓄積された書誌データの入力量は、昨年度よりは増加したものの、なお130点程度を消化したのみで、十分でない結果となった。よって最終年度には、これまで以上にデータの整理と入力につとめ、最終的には実見しえた明代前半期刊本のすべてにつき、その知見目録化をはたす予定である。
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Research Products
(3 results)