2005 Fiscal Year Annual Research Report
アルタイ・サヤン渓谷の岩絵銘文調査と古代遊牧民の聖山信仰に関する歴史民俗学的研究
Project/Area Number |
17520473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大澤 孝 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20263345)
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Keywords | アルタイ・サヤン渓谷 / 古代テュルク語の岩絵銘文 / アルタイ山脈 / 遊牧民 / 文字学的・文献学的調査 / 聖山崇拝 |
Research Abstract |
本年,私は2005年7月18日から23日に,ロシア連邦のサンクト・ペテルブルグ市の東洋学研究所を訪れ,19世紀末にV.Vヤドリンツェフが採拓したモンゴリア地域のオンギ碑文及びコトヴィッチが採拓したイフ=ホショトゥー碑文の拓本について,従来の読みと比較しつつ再検討する作業を行った。この結果,幾つかの点で従来疑問視されていた箇所の訂正を行うことができた。このことは今後,碑文間における文字の異同を通して窺える年代幅や新たな読みに基づく古代テュルク時代の歴史的再構築作業という点で少なからぬ意味を持つ。 さらに私は,同年9月11日から30日の間,ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク考古学・民族学研究所の上級研究員V.D.クバレフ及び研究員のG.V.クバレフと共同して,アルタイ共和国のゴルノ・アルタイ市を訪れた。そして現地の郷土博物館所蔵の古代テュルク銘文資料や同時代の石囲い遺跡や石人の実地調査を行った。またゴルノ・アルタイ市から東方に向かい,モンゴル国と境を接するアルタイ山脈西北のオングダイ地区及びコシ・アガチ地区に赴き,岩絵銘文や古代テュルク時代の墓石銘文を計測したり,写真撮影を行ったりした。これまでこれらの岩絵銘文は20世紀後半頃からロシア人研究者によって解読が試みられてはいるものの,その読みには不明な点が多く,再検証を必要としていた。実際,岩絵銘文は切り立った岸壁に刻まれて,確認するのがやっとのものもあり,また彫りが浅くて読みづらい上に,風雨による摩滅箇所も多く,解読は困難を伴った。しかし本調査の結果,多くの点で従来不明であった文字の形が確認され,新たな読みを提起することができたことは,本地域の文字資料を通して,当地の古代テュルク系遊牧民による聖山崇拝を伝える資料を獲得したことは,大きな意味を持つものといえる。
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Research Products
(3 results)