2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520477
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川本 芳昭 九州大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (20136401)
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Keywords | 鮮卑 / 鮮卑語 / 文字 / 楽府詩集 / 契丹 / モンゴル / 民族 / 万葉集 |
Research Abstract |
本年度明らかにした事柄は以下の諸点である。 (1)従来、鮮卑には文字がなかったとされているが、拓跋鮮卑にも文字があったと考えられること。 (2)それが制定されたのは、北魏3代皇帝である太武帝の時代であったこと。 (3)それは漢字の音を用いて、万葉仮名のように記述され、単語と単語を結びつける際、助詞や語尾のような語詞に対して定まった文字が用いられたと考えられること。 (4)鮮卑語で著された書物に、儒教経典などの翻訳書が見られることは、この文字の発言が、民族意識の高揚の結果として生まれたというよりも、その喪失、減衰と関連する面も存在したと考えられること。 (5)しかしまた一面で、鮮卑語の喪失という場面で、その言語を後裔たちに学ばせんとして、書物の編纂がなされていることは、そこに民族意識覚醒の一面を見出すべきであること。 (6)儒教経典などの翻訳書の他に、自民族の英雄伝、詩歌集などがあらわされたことは、日本における古事記や万葉集の編纂とも通ずる点で、注目すべき事柄であること。 (7)現存の魏書序紀に見られる神話的部分の記述から敷衍すると、序紀に先立つ原序紀とも言うべきもの、即ちモンゴルの場合でいえば元朝秘史のごときものがそれ以前に存在した可能性のあること。 (8)現存の楽府詩集には鮮卑の詩歌集が収められていること。 (9)その詩歌の中には可汗など鮮卑の言語からの翻訳語彙が見出されること。 (10)ただし、現存の楽府詩集に見える鮮卑歌はすでにかんごに翻訳されて掲載されていること。 (11)このことは楽府詩集編纂の段階ですでに鮮卑語が失われていたことを意味すること。 (12)このことを逆に考えれば、楽府詩集に掲載されている鮮卑歌は、当初鮮卑語で記述された可能異性があること。
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Research Products
(2 results)