2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀中葉の中国南部における社会変動と宗教・民族-太平天国運動を中心に-
Project/Area Number |
17520480
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
菊池 秀明 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (20257588)
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Keywords | 太平天国 / 移民 / 地域リーダー / 北伐 / 聯莊會 / 少数民族 / ブルーブック / 档案史料 |
Research Abstract |
本年度はまず広西において太平天国が挙兵した原因を『宮中档嘉慶朝奏摺』『宮中档道光朝奏摺』をベースに分析した。その結果、太平天国前夜の広西には地域社会の利害を代表する下層のリーダーが生まれつつあったが、清朝政府は彼らを有効に活用するシステムを持たず、それが社会に大きなストレスを与えたことが明らかになった。この研究成果は論文「太平天国前夜の広西における社会変容」として発表した。 今年度はまた北伐時期の太平天国の動向にスポットを当て、『清政府鎮圧太平天国史料』『宮中档咸豊朝奏摺』を中心に太平軍、清軍の動きを分析し、太平軍の兵力や戦略、北伐軍の接近に伴う北京のパニック現象、太平軍が行った住民虐殺事件、天津到達後の太平軍が籠城戦を続けた理由などを取り上げた。とくに清朝政府が北京市民に宛てて出した布告など、新史料を活用して、北京に潜入した太平軍の密偵が北京の防衛力を過大評価し、それが結局北京進攻を遅らせる結果をもたらしたことが明らかになった。 いっぽう北伐時期の河南聯莊会の抗糧暴動については、档案史料を整理して史料集『太平天国史料集』第一集にまとめた。また太平軍北上後の広東、広西で発生した天地会蜂起にも分析を加え、1854年から1857年までの部分については中国第一歴史档案館蔵の档案史料を整理した。これも『太平天国史料集』第二集、広西大成国反乱(上)としてまとめた。 なお太平天国とヨーロッパの関係史については、今年度はイギリス政府の外交文書(いわゆるブルーブック)の太平天国関連部分を複写し、整理作業を行った。また太平天国を訪問した外交官、宣教師の記述との内容照合を行い、北伐軍の北京接近に対するヨーロッパ側の反応を明らかにした。
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Research Products
(1 results)