2007 Fiscal Year Annual Research Report
西欧中世都市の食糧品市場に見る制度化と脱制度化の相関-サン・トメールの事例研究
Project/Area Number |
17520499
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山田 雅彦 Kyoto Women's University, 文学部, 教授 (90202382)
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Keywords | 自治 / 中世都市 / 都市条例登記帳 / ワイン / 関税 / ステープル / 市場経済 / 自由と規制 |
Research Abstract |
最終年度に当たる平成19年度は、従来概略のみを提示していた同市のワイン取引とその管理を取り上げて、これを本研究テーマの問題観点からより具体的・実証的に論じる作業を進めた。サン・トメールを含む北仏地域におけるこの重要な輸入物産の取引をめぐっては、都市当局による市場「管理」をただ単に「統制」「規制」の観点からのみ理解することに警鐘を鳴らした。むしろ、商人の論理と生活住民の論理の間にたつことで、行政固有の論理が生じてくること、しかもその過程が弁証法的に再生産されていくことを見通した。この結論は、前年度分析した魚市場の問題とも総合して、各地の研究会や学会などでも報告した(7月のイギリス・リーズ大学で開催された国際中世史学会、ならびに12月の関西中世史研究会)。論文は、本年度に史料分析したワイン市場に関する検討箇所を取り出して、所属大学発行の研究誌『史窓』の場で公にした。総合すると、本年度はサン・トメール市のワイン市場と魚市場の双方を総合的に取り扱うことで、本研究のテーマである「市場をめぐる制度化と脱制度化の相関」の問題をさまざまな場面で立体的に提示することが出来た。以上の具体的な市場とそれをめぐる管理の問題と並行して、13世紀サン・トメール市の都市条令登記帳(registre auxbans)の全条文のデータベース化の作業も昨年来進め、そのうち、今回具体的に検討素材とした水産物とワインの両市場に関係する条項(宿屋や居酒屋などの関連業種も含む)に関する箇所は、抜粋して最終報告書内に新校訂テキストを掲載することにした。
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Research Products
(3 results)