2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520501
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
丹下 栄 下関市立大学, 経済学部, 教授 (10179921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 倫子 慶應義塾大学, 文学部, 非常勤講師 (70407154)
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Keywords | 西洋中世 / 農村 / 手工業 / 鉄工業 / 牧畜 / 所領経営 / 間接経営 / アフリヘム |
Research Abstract |
2005年度の研究は、構成員が各自の分担領域での知見を集積することを主眼として進められた。すなわち丹下は中世初期における手工業、特に鉄工業に関する史料文言と考古学的情報の集積・データベース化を進め、並行して中世農村における手工業の意義を解明する理論装置の構築に資するため、農民社会論、開発経済論等、前工業化社会を対象とする諸業績の摂取に努めた。研究成果の一部は4月に歴史学研究会西洋中近世史部会の例会で「カロリング期農村における手工業」と題して以下のような要旨で報告する予定である。中世初期の鉄工業の存在を明示する文字史料は必ずしも多くないが、大所領が鉱山を包摂し、比較的地位の低い領民に精錬過程を担当させる一方で、一般の保有農民には鉄の代替として貨幣納入を科す事例が散見される。さらに一定の自立性を保った鍛冶職人の存在も史料からうかがえる。これらを勘案すると、大経営に包摂された採掘と精錬、小経営による鍛冶、という重層構造、そして両者を結ぶ環としての商品・貨幣流通という図式が浮かびあがってくる。 また舟橋は従来から研究を進めてきたアフリヘム修道院所領を主なフィールドとして、穀物生産に必ずしも特化しない所領経営の具体的様相を解明することに努め、現地に出張して実地調査・現地研究者との意見交換を行った。その成果の一部は5月に開かれる日本西洋史学会第56回大会で「中世盛期ベルギー修道院の所領集積」と題して以下のような要旨で報告される。アフリヘム修道院は干拓を中心とする地域開発を主導しつつ、牧畜を中心とした多様な経済活動を間接経営によって展開していた。つまりこの所領は間接経営を積極的に活用していたが、牧畜がその中心となった理由は、拡大しつつあった近隣諸都市、特にブリュッセルにおける消費需要とともに、フランドル伯領・ブラバ公領の境界地帯に立地するという、アフリヘム修道院の政治地理的状況にも求められるであろう。
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