2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520501
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
丹下 栄 下関市立大学, 経済学部, 教授 (10179921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 倫子 中央大学, 文学部, 非常勤講師 (70407154)
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Keywords | 西洋史 / 中世史 / 農村史 / 手工業 / 牧畜 / 農民経済 / 干拓 / 修道院所領 |
Research Abstract |
2007年度は前年度に引き続き、史料情報の蓄積とそれを基にした分析作業を行った。丹下は中世初期手工業(特に鉄工業、繊維業)についての史料文言のデータベース化を進めるとともに、農村部で行われた鉄工業、繊維工業についての分析を進め、成果の一部は「中世初期領主制と鉄工業者」(井内敏夫編著『ヨーロッパ史のなかのエリート-生成・機能・限界-』太陽出版、2007年)として公刊した。そこでは、領主制内部で手工業を行う領民が必ずしも隷属的存在ではなく、手工業を兼営する自立的小農民である可能性があること、同時にまた彼らが自律的経営を維持するには原料供給、市場機能の維持等における大領主の寄与が必要であったと思われることが論じられている。 舟橋はアフリヘム修道院所領における農民経済の実態を、寄進文書を主たる素材とし、2006,07年度に行った現地調査の知見を基に検討した。研究成果の一部は「12世紀ゼーラントにおけるアフリヘム修道院所領をめぐる一考察」『三田史学』76巻1号(印刷中)によって公表した。この論文で舟橋は、海岸沿いの低開発地における修道院の所領政策から、領民の一部が牧羊への傾斜を強めつつ、領主から土地経営を委託されるかたちで自立性を維持していたことが読みとれること、一方で領主にとって、領民への経営委託は必ずしも能動的経営施行の法規を意味してはいないことを論じた。 この他、中央大学人文科学研究所主催の公開研究会『西欧中世における宗教組織と在地社会』2007年3月24日、中央大学)において、丹下が「カロリング期フランク世界における『農民経済』」、舟橋が「改革派修道院の所領経営による空間形成-12世紀ベルギーの事例-」と題する報告によって研究成果の公表を行い、あわせてコメンテイター(杉崎泰一郎、赤江雄一)等からの評価や意見を聴取した。
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