2006 Fiscal Year Annual Research Report
デンマーク領西インド諸島における奴隷解放についての基礎的研究
Project/Area Number |
17520502
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
佐保 吉一 北海道東海大学, 国際文化学部, 准教授 (00265109)
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Keywords | デンマーク領西インド諸島 / セント・トーマス島 / セント・ジョン島 / セント・クロア島 / 奴隷貿易廃止勅令 / 自由黒人 / ピーター・フォン・ショルテン / 奴隷法 |
Research Abstract |
本研究2年度にあたる平成18年度は、主に次の3項目に関して研究を実施した。(1)旧デンマーク領西インド諸島に関する文献目録作成及び関連文献(複写)を入手する、(2)旧デンマーク領西インド諸島における奴隷制の展開内容を法的に整理する、(3)現地(現米領ヴァージン諸島)調査により史・資料を収集する。 (1)に関しては、近隣のジャマイカでの例(西出敬一氏の一連の研究論文)も含めた文献を入手した。また引き続き、Erik Gobel : A Guide to Sources for the History of the Danish West Indies(U.S.Virgin Islands),1671-1917,Odense 2002、をもとに基本的な文献の複写を行った。 (2)に関しては、これまで入手した文献や文献複写をもとに、主に奴隷制に関する考察を行なっている。現時点で明らかなになったことは次のとおりである。奴隷制を規定していたのはいわゆる奴隷法で、これには「1733年の奴隷法Slavelov af 1733」、「1755年の奴隷法Slavelov af 1755」があり、後者の方が、前者よりも内容的に奴隷の境遇を改善する視点が見られる。しかし、それは生産をあげるためのもので、奴隷の人権に配慮したものではない。 (3)に関しては、特に自由黒人に関する資料を調査・収集することができた。なかでも、Elisabeth Rezende:"Cultural Identity of the Free Colored in Christiansted, St.Croix, Danish West Indies 1800-1848"(博士論文、1998年)は特筆すべきもので、著者とも直接会うことができ有益な意見交換ができた。この他にSt.Thomas公立図書館では自由黒人の法的地位に関する研究論文を複写し、Christiansted公立図書館では奴隷解放に関する史・資料のマイクロフィルムの存在が判明した(オリジナルは米国国立公文書館所蔵)。Whim博物館文書庫でもPeter von Scholtenに関する研究書を閲覧し、彼の住居Bullowsmindeの写真を複写することができた。 今後はこれらをもとに詳細な考察を行なっていく。
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