2005 Fiscal Year Annual Research Report
帝政ロシアにおける「国民」形成の契機としての日露戦争・第一次革命研究
Project/Area Number |
17520508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
土屋 好古 日本大学, 文理学部, 教授 (70202182)
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Keywords | 日露戦争 / ロシア第一次革命 / 国民形成(ロシア) / ナショナリズム(ロシア) |
Research Abstract |
本年度は、日本とロシアにおいて国際会議で2度、国内学会で1度の口頭報告をおこなったほか、論文集に1編、雑誌に2編(1編は編集中、18年5月発行予定)の論文を発表した。宮崎県日南市での「日露戦争・ポーツマス条約締結百周年記念国際シンポジウム」においては、ロシアにおける日露戦争支援活動について報告し、極東工科大学(ウラジヴォストーク)における国際会議口頭報告では、日露戦争期におけるロシアと日本の銃後社会の比較をおこなった。この二つの国際会議および論文集『日露戦争研究の新視点』に発表した論文において、ロシア社会の一部が熱心に戦争支援活動を展開した一方で、国家全体についてみれば、日本社会に比して戦争遂行のための国民的一体性を欠如していたことを明らかにした。秋に開催された国内学会(ロシア史研究会大会)では、両国際会議ならびに論文集で発表した上記の知見をさらに発展させ、ロシアの国民的一体性欠如に対するロシア自由主義者たちの対応を、とりわけ交戦中の日本という国家に対する認識と言説の分析から考察し、自由主義者たちが1904年秋以降に明確に提示していく国民代表制要求のひとつのモデルとして、明治維新以降の日本における「国民形成=nation building」の成功があったという主張を展開した。そしてそこから、1905年にロシア国内において展開するいわゆる第一次革命の主要な課題は、多民族帝国であったロシアに国民代表制を挺子として国民的な一体性をもたらすことであったのだという仮説を提示した。従来戦争がもたらした社会状況の悪化が、革命と結びつけて論じられてきたが、ロシア近代社会における「国民形成」というより広いパースペクティヴから戦争と革命のつながりを提示しえたと考えている。平成18年度は、仮説を一層詳細に検証し、より確固とした主張へと発展させることが課題である。
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Research Products
(2 results)