2005 Fiscal Year Annual Research Report
新石器時代の生業や環境変化の指標となる島嶼出土イノシシ類の研究
Project/Area Number |
17520527
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwaki Junior College |
Principal Investigator |
山崎 京美 いわき短期大学, 幼児教育科, 教授 (60221652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 秀紀 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (30249908)
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Keywords | 考古学 / 新石器時代 / 縄文時代 / イノシシ / 伊豆大島 / 骨計測学 / 幾何学的機能形態学 |
Research Abstract |
本研究は日本の新石器時代に繁栄をもたらした経済基盤がどのようなものであったかを探る目的で行っている。具体的には、生業や環境変化の指標と見なされている自然分布域外の島嶼から出土する動物(特にイノシシ)を使用して、縄文時代に動物飼育が存在したか否かの調査を行った。自然分布しない島嶼から出土した縄文イノシシをめぐっては、本土イノシシよりも小形であることから多くの考古学者は人間が持ち運んだ後に島嶼化した、あるいは飼育したとの見解を示しており、最近では後者の見解が優勢である。そこで、本研究では本土よりも小形化した原因を追求するために、伊豆諸島のイノシシ出土遺跡中、長期間営まれ、多量の骨を出土した伊豆大島・下高洞D遺跡を対象として調査した。分析手法は歯や四肢骨を用いて計測データや骨端癒合のデータを収集し、イノシシ集団の年齢や構成およびサイズ復元を行った。これら成果を他の動物考古学者らと共同で日本全国のデータに組み入れて評価した結果、本土に比べてサイズでは顕著に違いがあるが、屠殺年齢および年齢構成では大差ないことを明らかにした(日本人類学会・日本古生物学会で口頭発表)。一方、イギリスの研究協力者らと共に開発している下顎第3大臼歯を用いた幾何学的機能形態学的手法による成果でも、大島集団は本土集団と形態自体も異なることを明らかにした(日本人類学会ポスター発表)。しかし、小形化した時期や原因については未解明なことから、人為の影響の有無については安定同位体分析により、また年代測定についてはAMS^<14>C年代測定分析を実施するために、専門研究者に依頼した。さらに、本事例と類似した事例がキプロス共和国にあるために、調査担当者であるフランスの動物考古学者に共同研究を依頼し、互いのデータを比較して検討することになった。このように、今後は世界的な視野から島嶼部出土のイノシシの意味を探ることが可能となった。
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