2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520528
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助手 (90332121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿子島 功 山形大学, 人文学部, 教授 (00035338)
杉本 憲司 仏教大学, 文学部, 教授 (90079020)
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Keywords | 漢代 / 北方 / 地域間交流 / 歴史地理環境 / 対外戦争と政治史 / 匈奴・鮮卑 / 郡県 |
Research Abstract |
本研究は、漢代において北方異民族と漢民族が交錯する境界領域に注目し、その地域動態を、政治動向、地理環境と生業適応、地域集団の帰属意識等から多角的に検討することを目的とする。 本年度は2回の研究会開催と、中国山西省・内蒙古自治区等での現地調査をおこなった。 研究会では、漢代境界領域における相互交渉について、各視座からの検討を進めた。上野は、山西北部地域の墓葬資料を対象に、被葬者の階層性に注目し、地域社会の階層集団の動向について検討した。他地域社会との比較を通じて、当該地域の集団の帰属性について議論し、境界領域社会の漢的世界での位置づけを検討した。杉本は、境界領域の郡県に対する、漢の政治理念的な支配・帰属意識について検討を深めた。大川は、漢と匈奴の軍事衝突を取上げ、匈奴の侵入経路に基づいて境界領域を明示するとともに、漢の防衛政策を支えた経済システムに注目した。軍糧調達・徙民・開拓の動向を整理し、政治理念と経済実効支配とを対比しつつ、境界領域に対する漢の支配型帰属意識を検討した。阿子島は、生業と環境適応を主眼に据えて、農耕と牧畜を対置し、山西北部地域における両生業システムが交錯する地域に注目した。双方の世界からみた漢代境界領域への親縁性と、地理環境的な限界ラインについて議論を進めた。また、昨年度の現地調査の成果を踏まえつつ、盆地単位の地域社会の在り方について、城郭、領域、生業、環境など複合的な視点から、共同して検討を進めた。境界領域における漢的世界の連続性と断絶を、文化、政治・軍事、経済、環境という視点から複合的に議論を深めつつ、地域における郡県社会の動向・実態をより明確にする試みを前進させることができた。 現地調査は、山西省北部から内蒙古自治区南部にかけて地域において実施した。漢的世界の「外なる周縁領域」に対する調査であり、昨年の山西省中・北部地域における「内なる周縁領域」を対象とした調査とあわせて、双方向的な交流の実態解明に向けた調査を終えることができた。
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