2007 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治復活後の韓国農村部における「場所マーケッティング」と地方財政
Project/Area Number |
17520537
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (10281974)
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Keywords | 韓国農村部 / 場所マーケッティング / 日韓比較 / チョウまつり / コウノトリ |
Research Abstract |
本年度はおもに、平成17年度と18年度にかけて行ってきた全羅南道咸平郡の「チョウまつり」および兵庫県豊岡市のコウノトリの野生復帰事業と場所マーケティングに関する研究成果の比較検討をおこなった。その結果次のようなことが明らかとなった。全羅南道咸平郡の「チョウまつり」においては、当該地域ではほかの自治体に勝る競争力のある地域資源が乏しかったため、固有の場所性とは関係のない要素、すなわち「チョウ」に代表される環境アイコンを導入し、都市住民に生態的なサービスを提供することで、自らの地域を「商品」としてマーケティングする戦略を取ってきた。従来の地域活性化の手法とはかけ離れた咸平郡の場所マーケティング戦略に対して、当初はほとんどの地域住民から反対されたが、施設物への投資を極力抑えながら、地域のイメージを高め、地元の農産物の販売促進に繋がるなどの成果が現れ始めると、反対していた住民も「実は成功すると思っていた」と証言するなど、自己防御的な態度を取り、「チョウまつり」に代表される積極的な場所マーケティング戦略の支持者へと変わっていった。要するに、咸平郡の事例では初期における都市部からの反響が、人為的に形成された新たな場所性を地域住民にも「自分のもの」として認識させるきっかけになったと言える。一方、兵庫県豊岡市のコウノトリの野生復帰事業の事例では、害鳥としての認識と新たなまちのシンボルとしての認識が共存しながらも、コウノトリの野生復帰事業に対する全国からの反響、すなわち「外部からの目」によりそれらの矛盾が繋ぎ合わさっている。「(自分の田圃に)コウノトリは降りてきて欲しいけど、サギが降りてきたら腹が立つ」という、現在はコウノトリの保護活動に積極的な地元農家の証言がこのような矛盾を端的に表している。韓国の咸平郡の事例と兵庫県豊岡市の事例に共通することは、(1)環境アイコンとして外部や地元住民ともに分かりやすい生物を選んでいること、(2)その環境アイコン自体に美しさと希少性が含まれていること、(3)小規模な自治体であるゆえ、単一の環境アイコンに集中する場所マーケティングを行ったこと、(4)農業と環境との矛盾を無理に解決しようとせず、その矛盾を抱え込む戦略を取ったこと、(5)「外部からの目」に投影された己の姿や評価が人為的に形成された場所性を「自分のもの」として認識させる過程で少なからず役割をしたこと、などである。
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Research Products
(6 results)