2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦前のわが国における地域組合電気事業の設立と展開に関する地理学的研究
Project/Area Number |
17520543
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
西野 寿章 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40208202)
|
Keywords | 戦前 / 電気事業 / 山村 / 町村組合電気 / 電気利用組合 / 広島県 / ドイツ / シェーナウ電力有限会社 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦前のわが国における電気事業史の中で、その存在について十分な研究と分析の行われていない町村が連合した町村組合電気と、集落の電化を目的として創設された小規模な電気利用組合の成立過程とその地域的条件を明らかにすることにある。 1年度目は、これらに関する原資料の存在を確認するための調査を中心に行った。その結果、町村組合電気については、山形県と宮崎県で糸口となる文献の存在、電気利用組合に関しては、産業組合関係資料に電気利用組合についてのある程度のまとまった資料のあることが判明し、個別事例については、県立図書館等での資料収集を行った。 これらをふまえ、2年度目は国内でのインテンシブ調査と国際比較事例調査を実施することとした。 前者は広島県旧戸河内町に存在した寺領電気利用組合である。同組合は大正15年に設置を申請し、昭和2年に開業した。同組合に関する資料は、旧戸河内町史編纂の際、同組合の組合長経験者宅から収集されたものであった。設立の過程、基盤となった産業組合の組織構造などを知ることのできる貴重な資料が収集できたが、なおも不足する資料があり、引き続き調査を行う。 一方、国際比較事例として、ドイツ南西部・バーデン・ヴュルテンペルク州にある人口2,500人の山村・シェーナウ町に1996年に設立されたElektrizitatswerke Schonau Vertriebs GmbH(EWS シェーナウ電力有限会社)を調査した。EWSは、1986年のチェリノブイリ原発事故を契機として、原発に依存しない地域電気システムの構築をめざして、地域住民が主体となって設立された。調査では、設立の経緯、組織構築の方法、出資者等を中心に行った。設立のプロセスには、ドイツの法律が複雑に絡んでいて、今後、収集した資料の分析を行い、ドイツの法令等に照らし合わせての研究を進める計画である。そのさい、ドイツの電力自由化がシェーナウでの電力会社設立の追い風になったこともあり、戦前の日本の事例と単純には比較できないものの、ドイツの過疎山村から発信されたいわば電力革命は、戦前の日本の山村に設立された町村営電気や地域組合電気と共通した枠組みを有しているものと捉えられた。
|