2006 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける伝統漁法石干見の保存と活用に関する漁業文化地理学的研究
Project/Area Number |
17520550
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210)
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Keywords | 石干見 / 有明海 / スクイ / 韓国 / 石防簾 / 台湾 / 石滬 / ヤップ島 |
Research Abstract |
本年度は、各地の石干見が敷設されている現場を見たうえで情報を得ることに主眼を置いた。2006年8月には、フィリピン中部ピサヤ諸島のギガンテ島において、現在も利用されている石干見atobを確認した。これはサンゴ石灰岩を用いて築かれており、形態としては、捕魚部を設けた構造になっていた。9月には、沖縄石垣島(石垣市白保)における石干見(魚垣)の復元について情報を得た。復元された魚垣で地元小中学生によって実際に魚とりも行われたが、同月に襲った大型台風によって、垣の一部が崩壊してしまった。その後の魚垣の状況については、復元の中心を担ってきたWWFサンゴ礁保護研究センター研究員と密に連絡を取りながら追跡し続けている。2007年3月には、ミクロネシア連邦ヤップ州において石干見achの利用状況と残存状況について調査した。最高時800基以上あったとされるachは、現在、数基を残す程度となってしまっている。これは、効率の良い化繊漁網が導入された結果、伝統漁具自体の利用頻度が急激に低下してしまったこと、さらには人口の減少(いわゆる過疎化的な現象)によってach利用が維持できなくなったことなど、複数の理由によるものと考えられる。 報告としては、2007年2月に、編著『石干見』(法政大学出版局)を刊行した。これは日本、韓国、台湾を中心とする東アジアの石干見研究の現在について問うたものである。また、論文として、「韓国の石干見に関する覚え書き」(関西学院史学第34号、2007年3月)、および「伝統漁石干見の過去と現在」(小長谷有紀・中里亜夫・藤田佳久編『林野・草原・水域』、朝倉書店、2007年3月)を発表した。これら2編の論文は、文献研究と現状分析のための現地調査にもとついて執筆したものである。
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Research Products
(3 results)