2006 Fiscal Year Annual Research Report
南米カトリック・ミッションの宗教的実践における文書の媒介作用の歴史人類学的研究
Project/Area Number |
17520566
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
齋藤 晃 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 助教授 (20290926)
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Keywords | 文化人類学 / 民族学 / 宗教学 / テクスト学 / ボリビア |
Research Abstract |
本研究の目的は、南米ボリビア東部低地の先住民を対象に、キリスト教の宗教的実践に関連する文書文化の形成・変容・現状を、文献調査とフィールド調査の併用により明らかにすることである。 研究代表者は平成18年9月、昨年度に続いてふたたびボリビアに渡航し、ベニ県のトリニダ、サン・イグナシオ、サン・ロレンソで、キリスト教的文書文化の担い手である先住民の教理教師・聖具室係・楽士・歌手に対して聞き取り調査を行った。また、彼らが所持する宗教文書を複写し、くわしく検討した。その結果、文書の利用方法や保管・継承の形態は19世紀以降、ほとんど変わっていない反面、文書の内容面では、20世紀以降に普及したスペイン語の祈祷や聖歌が著しく増加するなど、持続と革新のふたつの潮流があることを確認できた。 研究代表者はまた、9月末から10月初めにかけてアルゼンチンに渡航し、国立文書館などで18・19世紀の歴史資料を収集した。それらの資料の検討により、18世紀後半のイエズス会追放後、世俗化されたミッションにおいてスペイン語の識字教育が本格的に取り組まれ、その結果、キリスト教的実践とは直接かかわらない新たな識字層が形成されたこと、そしてその新興エリートが旧来の文書文化の担い手たちの権威に挑戦するとともに、スペイン統治へ異議申し立てを行っていたことを確認できた。 今後は、平成17年度と18年度に収集した資料をさらにくわしく分析し、ボリビア東部低地のキリスト教的文書文化の全体像を解明するとともに、文書と権力、文書とアイデンティティの関係に着目することで、ミッション時代以降の先住民社会の再編成のプロセスを検討し直したい。
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