2006 Fiscal Year Annual Research Report
12世紀ドイツにおける法の構造変動の総合的研究-中世中期の王権を中心に
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17530003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 洋一 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 教授 (00114596)
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Keywords | 学識法 / ラントフリーデ / 叙任権闘争 / 法制史 / 国制史 / 裁判 / 紛争解決 / 王権 |
Research Abstract |
(1)17年度に行なった準備作業を基礎として、シュタウフェン期における国王周辺の知識人のスコラ学的知識のあり方について、最近かなり発表されている研究文献(とりわけOtto von Freisingについて)を検討したほか、Otto von FreisingおよびAnselm von Havelbergの著作を分析した。また、下記(3)の作業の中で、Wibald von Stabloが、初期シュタウフェン朝の国王文書の中で、裁判による紛争解決を進める方向での動きを促進したのではないかという見通しを持つことができた。 (2)王権の発する諸文書の多くは、各地の修道院で教育を受け、司教教会で実務に就いていた聖職者たちによって作成されていたものと思われる。また、これらの文書の受け手の中心も、同様にこれらの司教教会の聖職者であった。そこで、王権との関係が深く、司教文書がある程度残っているヴュルツブルク、マインツの教会と関係のある証書を分析し、そこに見られる法観念の変化を析出することに努めた。しかしこの点については、十分な情報量を持った史料を見いだすことができず、必ずしも明確な結論に達することができなかった。 (3)最近のゲルト・アルトホフらの問題提起を念頭に置いて、オットーネンから初期シュタウファーまで、とりわけ国王宮廷における裁判にかかわる証書を網羅的に分析して、紛争解決に関する王権及び宮廷に集う諸有力者のの態度、紛争解決のパターンの変化を跡づけることに努めた。オットーネン期については、ドイツとイタリアの明確な違い、ドイツにおいてもいわば刑罰的な仕方で国王裁判が用いられていること、初期シュタウフェン期については、はっきりと教会が裁判による紛争解決の推進者であることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)