2006 Fiscal Year Annual Research Report
復讐断念誓約(ウァフェーデ)文書と16世紀前期ドイツにおける刑事司法史の研究
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17530010
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
若曽根 健治 熊本大学, 法学部, 教授 (40039970)
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Keywords | ウァフェーデ誓約証書 / ウァフェーデの破約 / 社会的規律化 / 刑事刑と贖罪 / 和解 / 保証 / 収牢と釈放 / 請願 |
Research Abstract |
(1)2006年7月11日イギリス、リーズ(Leeds)大学で開催の国際中世史学会(International Medieval Congress)において「Feud : Ritualized Conflict as Judicial Process in Germany of the Later Fourteenth and Fifteenth Centuries」(「フェーデ:裁判過程としての儀礼化された紛争--14世紀後期〜15世紀ドイツにおける--」)と題する報告をおこなった。そこでは、フェーデ通告状とウァフェーデ誓約証書から、中世後期におけるフェーデを、その儀礼性の観点から取り上げた。ウェストファリアにおける騎士・従士と、都市との紛争事例を中心に考察した。フェーデ通告は、当該フェーデ(権利主張を掲げた実力行使)の正当性を担保する行為であるが、しかしフェーデ通告によって直ちに実力行使が開始されるわけではない。フェーデ通告は、相手を交渉の場に引き出すための手続きの性格(儀礼性)が色濃かった。 他方、ウァフェーデ(復讐断念の誓約)はフェーデの過程で捕らえられ、その釈放のさいに逮捕に関わった者らにたいしておこなうものである。本来裁判所の外で交わされていた誓約が法廷の場で交わされる事例が出てくる(儀礼性)。ここには、紛争の解決全体をできるかぎり司法のルールに載せようとする都市の志向があり、都市による平和形成の一つといえる。 当事者はフェーデによって被る「損害」を実感していた。そのため、交渉によってフェーデをできるかぎり回避し、またはその再発を防ごうとした。それには、フェーデ敢行者の名誉や「面子」を保持させる方法が必要であった。「儀礼性」を考える意義は、ここにある。 (2)本年度は研究の中心を、ドイツの文書館に保存されているウァフェーデ証書、およびフェーデ通告状の収集においた。両文書(未刊行)は共に、バイエルン州のネルトリンゲン市文書館の他、7文書館において文書館長の指導の下で収集する(約400点)ことができた。
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Research Products
(1 results)