2006 Fiscal Year Annual Research Report
民事裁判における「特段の事情」の法理論的構造に関する私法学史的研究
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17530013
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
兒玉 寛 龍谷大学, 大学院法務研究科(法科大学院), 教授 (70192060)
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Keywords | 特段の事情 / サヴィニー / 法律解釈方法論 / ドイツ私法学 / 類推 / 目的論的縮減 |
Research Abstract |
2006年度は、第1に、「特段の事情」という解釈技法に対応する法律解釈方法論の論議の淵源を、19世紀前半のドイツ私法学に求め、サヴィニーの「類推論」の分析を行った。その研究成果として、「サヴィニーの類推論について断章II」、林信夫=佐藤岩夫編『法の生成と民法の体系「廣中俊雄先生傘寿記念論文集」』(創文社・2006年・12月)545頁〜573頁を公表した。サヴィニーにおいては、現代の民法の条文に相当する法命題が「法制度」という枠のなかに置かれており、新しい法命題が、この枠の中で、類推あるいは目的論的縮減の手法で案出されている点に注意を喚起した。今後は、それらの手法を具体例にそくして整理する課題となる。 第2に、サヴィニー以降のドイツ私法学における法律解釈方法論の展開のなかで、「法制度論」が衰退したことに着目し、それに代わって主流となった方法論において、サヴィニー流の手法に代えて、どのような手法が「特段の事情」に対応する機能を果たしているのかを明らかにする作業に着手した。具体的には、民事訴訟法学の理論化の過程で「経験則」をめぐる論議がどのようなものとなっていたかを分析する作業を行っている。 第3に、日本の最高裁判例を素材にして、弁護士・本学法科大学院生との共同研究を行い、実務上の有益な視点を教示された。弁護士を交えたこの共同研究は、1日かぎりであったが、その後、院生諸君と自主的な勉強会を立ち上げて、毎週1件の判例の検討会を継続慰している。
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Research Products
(1 results)