2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17530018
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹沼 弘志 静岡大学, 教育学部, 助教授 (70283322)
|
Keywords | 社会的排除 / 立憲主義 / 人権 / 日本国憲法 / ホームレスの人々 / 監視社会化 / 社会統合 / 社会権 |
Research Abstract |
本年度は、欧米での社会的排除に関する理論的研究を参照しつつ、日本国憲法において社会的排除概念を位置づける理論的研究を中心としつつ、同時に日本における社会的排除状況に関する調査研究を進めた。また、日本における社会的排除をめぐり最も深刻な問題となっているホームレス問題に関して、大阪市内の公園で起こった野宿者テントに対する行政代執行、野宿者の住所裁判など緊急な課題についても、分析研究を行った。 日本国憲法において社会的排除をいかに位置づけるかについては、本来の社会的排除概念がとりわけ失業という生産点からの排除を意味してきたことから、社会権概念を中心に考察することが妥当である。しかし、社会的排除概念は、失業それ自体が単なる経済問題だけでなく、社会階層、国籍、民族・人種など多様な問題との関連性から生じた構造的問題であるがゆえに、多様かつ広範な内容を含まざるを得ない。それゆえ、社会的排除は、社会内部の諸種の分裂や対立緊張関係と密接な関わりを持たざるを得ない。そのため、近年、監視社会化ないし治安国家化と呼ばれる傾向との関連性が問題となる。社会的排除と監視社会化との結合を象徴的に示すのが「ホームレスの犯罪化」である。日本においても、ホームレス自立支援特別措置法によるセンター事業を中心とした施策が進められる一方、公園等に居住するホームレスの人々に対する排除圧力が強化されている。また、支援策自体が安定した生活再建に結びつかず、再野宿化させる傾向もある。同時に、多くの福祉施策からもれ生活困窮に陥る人々が犯罪へと追い込まれ、さらに出所後の生活支援が欠如しているために、野宿、再犯の悪循環から抜け出せない状況もある。 そこで、本研究では、社会的排除と監視社会化、治安国家化などとの関連性を総合的に捉える、広義の社会的排除概念を採用し、これを立憲主義的にコントロール可能性を探ることを基本的な課題として位置づけ直すこととした。
|
Research Products
(7 results)